米山榮先生のクリニックでの研修会や米山塾

 米山榮先生のクリニックでの
研修会や米山塾

鍼灸学校を卒業後に佛眼鍼灸理療学校に進み、あんまマッサージ指圧の免許を取りに三年間京都へ通学しました。

その際、土曜日の授業が変則的で2週間に1度授業が無かったため、この時間に三重県四日市市になる米山クリニックで研修を受けさせていただきました。

この米山榮先生の研修と、米山由子先生のお二人のおかげで、自分は少しだけ医療者としての自覚を持ち始めます。

米山榮先生は、米山鍼灸院のご子息で、米山博久先生、米山由子先生という鍼灸師を両親に持ち、ご自身も鍼灸師になります。
米山榮先生が鍼灸師になってまもなく、米山鍼灸院を通じて体験してきた鍼灸という世界と、世の中からみた鍼灸のギャップを味わう。

それは、米山博久先生の代理で日本の医師と中国に行った際に、なんと鍼灸師の扱いが悪いこと。
自分が両親の背中を見てきて「鍼灸はこれだけ患者さんに貢献している素晴らしい職業だ」と思っていた自分と、
そういう視点は持っていない医師と出会ったことで、鍼灸のよさを証明するために、自分は神経生理学的な側面から鍼灸を研究する。

そんな思いで医学部にいき、神経内科医になった先生です。

神経内科医になって、医師がどういった勉強をするのか。
どういった教育をするのか。

その中で経験された良い文化を鍼灸の中に取り入れて、いろんなお話をしてくださいました。

「卒後の3年間が自分の臨床家としての将来を決める」

米山榮先生が研修医時代に指導医の先生に言われた言葉が「卒後の3年間が自分の臨床家としての将来を決める」であったと、
研修が始まって、すぐに教わりました。

鍼灸師になって1年が経過していたこともあり、残り時間はあと2年。
ここでの過ごし方で将来が決まってしまう。

佛眼鍼灸理療学校を卒業したら、結婚して福岡に行こうということを、この頃には考えていたので、
大阪での生活、米山クリニックでの研修時間を含めて2年間が自分にとって大切な期間だと認識をしてスタートしました。

 

「ベッドサイドでの研修」

米山クリニックの研修では、内科の診療と鍼灸の診療が併設されているために行ったり来たりされる米山先生の横について、ひたすら診察と治療を見学しながら、まず最初にさせていただいたのが病気を知ること。
鍼灸師の国家試験を合格し免許を取得しているので多くの疾患は名前は知っているし、国家試験のレベルでの疾患に対する特徴的な症状、所見、徴候は名前では知っている。

一つ一つを言葉でつなぎ合わせることができれば、国家試験は合格できます。
しかし、実際にやらなければいけないのは、目の前の患者さんはどんな病気のどんな状態なのかを捉えること。

これが教科書で学ぶことと、実際に診察するのでは大きな違いがある。

Dr. 米山「遠ちゃん。診断の第一歩は何かわかるか?」
遠藤「 … 。」「わかりません。」
Dr. 米山「診断の第一歩は、その診断を思いつくこと」

こういう表現をしていました。

後々研修を繰り返していくうちに

ある症状を訴えている
ここでは例として「肩こり」を訴えている。

この時の鑑別リスト。この鑑別リストとあげる思考が診断の第一歩。
「はい。肩こりですね。では肩に鍼をしましょう。」
では素人です。

ここで大切なことは、
一旦は、「心筋梗塞」などの循環器、「肝臓など内科的な疾患」
これをリストに挙げた上で除外診断をする。

もちろん診察は、患者さんが一言目を発してから始まるのではなく。

診察室に入室して椅子に座るまでの歩行の仕方。
姿勢、呼吸の状態。
発声の感じ。
年齢や性別もすでに診察が始まっているため、すでに一言目を発した段階で重篤な疾患は除外されていたりします。

 

「ベッドサイドの神経の診方」

神経内科医の米山榮先生は、『神経内科医のゴールドスタンダードは身体診察』ということを常々おっしゃっていました。

鍼灸学校の授業でも腱反射といった身体診察は学びますが、
反射の亢進や消失をどう判断するのか。
反射が亢進しているのか。患者さんが緊張しているから反射が亢進しているように観えてしまうのか。

この差は鍼灸学校や教科書ではわからない部分でした。

反射について、特に教科書では記載されていないプロの視点としては、
本物の反射の亢進は手で叩いても収縮を認める。
本物の反射の亢進はいつでも亢進している。
これと比較して、精神的な緊張によって反射の亢進を認める場合には、一時的な亢進を認めるが、次に叩くと正常と反射が一定ではない。
また、実際には反射というのは検査の一部でしかないため、臨床検査を他のものも含めて総合的に判断すること。

後に、米山榮先生のお弟子さんと一緒に集まる米山塾というものがあり、その中で「マクギーを読みなさい」と薦められました。
このマクギーは現在は第4版になっていますが、私が米山先生に薦めていただいた頃は第2版でした。
このマクギーの中で特に大事にしていたのは、
第1章の「身体所見の診断精度」
・検査前確率(pretest probability)
・感度(sensitivity)と特異度(specificity)
・尤度比(Likelihood Ratio:LR)

この項目を理解するようにと。
鍼灸学校時代の知識では、感度と特異度だけしか意識していませんし、その時は定義だけしか覚えた記憶がありません。
感度:疾患のある患者のうちで身体徴候を示す。(すなわち、陽性の結果がある)患者の比率
特異度:疾患のない患者のうちで身体徴候を示さない(すなわち陰性の結果がある)患者比率


この時に大切なのは、感度は疾患ありという図の左側だけを意識すること。
感度(別名:真陽性率)  a/(a+c)

特異度(真陰性率) d(b+d)
検査に感度、特異度がわかっている際に、ある検査が陽性、陰性で臨床的に考えるかが大切です。
鍼灸学校の学生の頃には、感度または特異度が高い検査が良い検査。
感度が高い検査が陽性であれば意味がある。特異度が高い検査が陰性であれば意味があると思っていました。
しかし、実際の臨床ではこういう考え方はしません。

SpPin


特異度が高い検査で、陽性であれば疾患ありと考える。
特異度が高い検査が検査陽性であれば、偽陽性である確率が少なく、疾患ありと考えることで可能。
(陽性的中率がわかっていれば、それを指標にすれば良いが、多くの検査は感度、特異度しか記載されていない)

感度が高い検査で、陰性であれば疾患なしと考える。
感度が高い検査が陰性であれば、偽陰性である確率が少なく、疾患なしと考えることで可能。
(陰性的中率がわかっていれば、それを指標にする)
(参考文献:マクギーの身体診断学エビデンスにもとづくグローバル・スタンダード , 医学書院

検査の精度を考えて臨床に活かすことができているのは、この頃の土台によるものであり、
米山先生との出会いがなければ、自分が目指す医療者像を思い描くことはなかったと思います。

本当にラッキーでした。

米山先生、米山由子先生にいただいた恩をご本人にお返しすることは叶いませんので、恩送りという形で自分の周りの方に、少しでも何かのきっかけを作れたらと思って活動をしております。

 

(文責:遠藤彰宏)

 

 

当院が得意とする専門分野

 

妊娠出産のための鍼灸治療

 

 

 

耳鼻科領域の鍼灸治療

 

 

 

 

STAFF

#1
遠藤真紀子
CEO
(代表取締役社長)
はり師
きゅう師

#2
遠藤彰宏
CDO
(最高デザイン責任者)
はり師
きゅう師
あん摩マッサージ指圧師

#3
竹永百華
はり師
きゅう師

#4
荻侑花
はり師
きゅう師

#5
岩佐ゆかり
はり師
きゅう師
歯科衛生士

#6
福地弓子
Cabin attendant

#7
髙田良子
受付/事務
当院で30年勤務
どんなに昔の方からお電話をいただいても
「〇〇さんお久しぶりですね」
この安心感に私たちは支えられています。
当院のレジェンド。