「耳管開放症/耳管狭窄症」
耳閉感(耳が詰まる)
自声強聴(自分の声が響く)
耳鼻科疾患専門の鍼灸院 | 福岡天神・田中はり灸

はじめまして、田中はり灸療院の遠藤彰宏です。

現在当院には年間600名を超える新患の方が様々な症状で来院されますが、その内4分の1の方が耳鼻科疾患での来院です。
1年間に来院される耳鼻科疾患の内訳は、突発性難聴が約80名、顔面神経麻痺が約40名、耳管開放症・耳管狭窄症が30名という内訳です。
(主訴:突発性難聴で耳鳴りを持っている方は、突発性難聴でカウントしています)

耳鼻科疾患の中でも鍼灸治療が特に効果的なのが「耳管開放症」「耳管狭窄症」です。

皆様がこのWEBページに辿りつくまでに、様々な耳鼻科のWEBを調べたことと思いますが、
「なかなか耳管を専門としている耳鼻科医の先生がいない」というのが現状ではないでしょうか。

「耳管」の症状の中でも耳管狭窄症に関しては、先に原因疾患(副鼻腔炎・風邪等)があり、その炎症が耳管に影響して不調が起こる。
その原因に対して抗生物質などの現代医学的な治療を行い、その効果が出ると耳管の症状が治まっていきますので、治療方法は存在する、ということになります。
一方で耳管開放症に関しては、耳鼻科の先生もなかなか打つ手がないのが現状です。
漢方薬を服用しているという患者さんは多く、鍼灸治療と漢方を合わせて治療をしているというのが当院の患者さんの傾向です。

鍼灸治療を始めると、漢方薬単独の時と比較して明らかに症状に変化が出てくる。

幅広く様々な症状や健康問題に対して鍼灸治療は有効ですが、
中でも「耳管」の症状は、かなり患者さんに貢献できる治療分野だと感じています。

鍼灸治療では、耳周辺、顎周りの局所的な治療と全身の治療を組み合わせて行うことで、症状の改善を狙っていきます。
症状が改善し、快適な生活がおくれるようにしっかりとサポートさせていただきます。

「耳管開放症」を中心に丁寧に言葉を選び、わかりやすさを意識しながら文章を書いていますが、
途中には医学情報も含まれてきますので、少し読みにくい点があるかもしれませんし、ボリュームもあります。
お時間のある時に読み進めてみてください。
お一人で悩まずに、どうぞお気軽にご相談ください。

田中はり灸療院 遠藤彰宏

耳管開放症、耳管狭窄症以外でお悩みの方は下記より専門のページをご参照ください。

■突発性難聴お困りの方はこちらへ
■耳鳴りについてお困りの方はこちらへ

耳管開放症とは

「耳管開放症」では、耳管が一定時間連続して開放していることにより、耳が塞がった感じ(耳閉感)や自分の声が大きく聞こえる(自声強聴)などが起こり、自分の声が響いて聞こえるため、声量の調整が難しい。自分の呼吸音が耳に響くため低い音が聞き取りにくい、などの不快な耳症状を訴える方が多い。

この病気の男女比は女性が多く、疲れや睡眠不足が続いたり、運動後の脱水や、急激に体重が落ちた時などにも起こりやすくなります。
妊娠初期につわりで体重が落ちた時など、ダイエット以外の体重の減少でも起こります。
耳管については、16世紀のイタリアの偉大な解剖学者Bartlomeo Eustachi(Latin name:Eustachius)が報告。
耳管開放症は1840年にMullerが報告し、次いで1867年にJago氏 によって初めて報告された病気です。

耳管開放症は、軽症者まで含めると日本人全体の約5%に相当する約600万人が罹患していることが推察されている
(『耳管開放症の新しい考え方』日耳鼻,113,706-709,2010)

ごく身近にある症状でありながら、なかなか西洋医療では苦戦している疾患の一つだと言えます。

耳管狭窄症とは

「耳管狭窄症」では、耳管が詰まり、耳が塞がった感じ(耳閉感)、自分の声が大きく聞こえる(自声強聴)、自分の呼吸の音が耳に響くなどの症状が起こります。

耳管開放症と耳管狭窄症は
揺れうごく
「耳管機能低下症」としてとらえる

当院では鍼灸治療をするにあたり、現在発症している耳の不調が
「なぜ発症したのか」
「現在どういう状態にあるのか」
を知っていただく必要があると考えています。
当院では「耳管開放症」「耳管狭窄症」に対して『耳管機能低下症』という表現を採用しています。

「耳管機能不全と滲出性中耳炎」(伊藤真人)

耳管機能不全には「耳管狭窄症」と「耳管開放症(閉鎖不全症)」があるが,いずれも滲出性中耳炎の原因となりうるものである。
滲出性中耳炎の耳管では、耳管の能動的な換気能が障害されるために、中耳圧の平衡は行われずに中耳腔は陰圧となり、中耳の血管・リンパ管からの液の漏出が起こるために滲出性中耳炎が発症する。
「耳管狭窄症」は種々の機能的もしくは機械的原因によって耳管が狭窄・閉塞した状態であり、「耳管開放症」は安静時には通常閉鎖しているはずの耳管が開放している状態である。
この一見異なる病態が、ときに混在している場合もあり、両者を合わせて耳管機能不全として取り扱うのが適当である。

『よくわかる病態生理14耳鼻咽喉疾患』日本医事新報社

これらは病名は違うものの、「耳管開放症」の方も、ある時点では「耳管狭窄症」の症状が出ていたり、
また「耳管狭窄症」の方に「耳管開放症」の症状が出たりがある。

「通院する病院が変わる場合」「担当する医師が変わった場合」などでも
「耳管開放症」「耳管狭窄症」の病名が変わったりします。

結局どっちなの?という質問をよく受けますが、
伊藤真人先生の解説にあるように「耳管機能低下症」と呼ぶのが一番しっくりきています。

 

 

耳管開放症の主な症状

【音過敏】
音に対する過敏さから「音程が二重に聞こえる」「音が割れる」

【耳閉感】
「飛行機や、トンネルで耳が詰まった感じがする」
「自分の出している音の大きさがわからない」
頭を下にしたり、横になったり、お風呂に入ると一時的に良くなりますが、激しい運動をしたりすると、また悪化する。

【自声強聴】
自声強聴は、「自分の声が響いて不快になる。症状が強い方の中には『話すのが嫌になる』」という方もいます。

耳管開放症の患者さんに「原因になるストレスはありますか?」と質問すると「ある」と答える方が多く、
耳の症状だけではなく、頭痛、顔色が悪い、手足の冷え、立ちくらみなど、自律神経の乱れからくる症状や、末梢循環の障害、
疲労感や神経質になるなど、様々な要因・心身の症状が絡み合っている方が鍼灸院に来院されます。

また、耳管開放症は症状の持続時間が異なるため、耳鼻科受診時に症状がない場合には耳管狭窄症と誤って診断される場合や、様々な身体症状や耳の不快が強いために、うつ病と診断されてしまうケースもあります。

耳管開放症の診断基準

 

1.自覚症状がある
自声強聴、耳閉感、呼吸音聴取䛾1つ以上
2.耳管閉塞処置(AまたはB)で症状が明らかに改善する
A. 臥位・前屈位などへの体位変化
B. 耳管咽頭口閉塞処置(綿棒、ジェルなど)
3.開放耳管䛾他覚的所見がある(以下䛾1つ以上)
A. 鼓膜の呼吸性動揺
B. 鼻咽腔圧に同期した外耳道圧変動
C. 音響法にて①提示音圧100dB未満 または②開放プラトー型

 

注釈 1.診断基準案2016使用にあたっては一般的事項 ・数回の診察後に初めて診断が確定できることもある。  例1)初診時は疑い例(1+2または3)。再診時に2また䛿3が追加されて確実例(1+2+3)
例2)初診時は該当せず(1のみ)。再診時に疑い例(1+2または3)

 

下記は難しい言葉が並んでいますが、体の位置、寝ている時に楽か。前屈すると症状が和らぐか。または女性の場合は少しきつめにスカーフ(男性ならネクタイ)を巻いた時に症状が変化するか。
もし、症状が楽になる場合には、耳管開放症の疑いが強くなります。

2.「耳管閉塞処置による症状の明らかな改善」について
・耳管開放症は、耳症状があるときに開放した耳管を閉塞することで、症状が消失または軽減するはずである。
この所見が無ければ耳管開放症は否定される。
(例えば、急性感音難聴の後遺症などとしてみられる自声強聴での、耳管閉塞しても症状は著明な改善がない)

・前屈位または仰臥位への体位変化(2A)も耳管閉塞処置は一つといえる。
ただし、一部の開放耳管では、仰臥位でも耳管が閉鎖しない(2A陰性)症例がある(数%)。
この場合、2Bを確認することで陽性と診断できる。

・2Aは問診で行えるため、受診時に症状がない患者でも、問診から判定可能である。
耳症状が明らかに軽減すると患者が述べた場合を2A陽性とし、答えがあいまいな場合は不明とする。
その時点で耳症状があり、かつ答えがあいまいであれば、実際に診察椅子を倒して仰臥位とした後に再度問診し、陽性・陰性の判定をするとよい。
・受診時には症状がなく、答えもあいまいで判定不能とした場合も、体位変化に伴う症状変化が本症の診断に重要なことを患者に伝え、次回は受診時に再度問診することで明瞭な答えが得られた場合、2A陽性とする。

参考)

日本耳科学会:耳管開放症診断基準案2016.

日本耳科学会:耳管狭窄症診断基準(2018).

耳管の機能を正確に捉える難しさ

 耳管開放症、耳管閉鎖不全、耳管狭窄症などの耳管疾患は耳管の閉じ難さと開き難さとのバランスによって特徴つけられる。そして一部の疾患を除き、耳管の閉じ難さと耳管の開き難さは終日同じ状態が続くとは限らない。そのため限られた診療時間内に患者の耳管機能を正しく評価することは必ずしも容易ではなく。複数回の診療基準(および診断基準案)に定められた項目について繰り返し記録する必要がある。
『コーンビームCTによる耳管形態と耳管疾患との関連性についての検討』2022 年 32 巻 1 号 p. 98-106

耳管開放症・耳管狭窄症
病院での治療方法

耳管狭窄症は、原因疾患が特定できる場合には原因に対する治療が基本となります。

原疾患が副鼻腔炎の場合には鼻の治療、アデノイドの場合には手術を検討をされるケースがあります。
中耳に貯留液が溜まっている場合には、貯留液を取り除く目的で耳管通気が用いられます。
保存的な治療で改善しない場合は、鼓膜切開や鼓膜に換気チューブを取り付る治療が行われます。


耳管開放症は、最近漢方薬「加味帰脾湯」(ツムラ137番)の有効性が認められ、注目されています。
身体の状態によって補中益気湯や柴胡加竜骨牡蠣湯を用いる先生もおられます
改善しない場合には、耳管周囲への脂肪やコラーゲンの注入、耳管へのバルブの挿入などを行っている施設もあります。

 

そもそも「耳管」ってどこ?


耳管は中耳腔で鼻の奥とつながっています。中耳腔と鼻の奥をつなぐ管を耳管(じかん)と呼びます。
長さは約3.5cmほどの細い管です。周囲を骨、血管・筋・脂肪に囲まれています。
耳管は通常は安静時には塞がっている(閉鎖している)が、あくび(欠伸)をしたり、ものを飲み込む時(嚥下時)などに一瞬だけ(1秒以下)開きます。
普段は閉じていて必要なときに開く、これは中耳腔の気圧を外気圧と同じに調整する換気作用です。

もう一つ排出機能(中耳腔の分泌物や貯留液を上咽頭に)や、病原体からの防御(中耳炎などにならないように)といった機能をもっています。

耳管の位置のイラスト

皆さんとお話しをしていて驚かれるのですが、耳管の位置ですが、イラストのような場所が目安になります。
普段は、顔や耳、頭髪、後頭部のように見えるところだけしか意識することがないので、「中耳」「耳管」「鼻の奥」という位置関係って意識することがないですね。

 

生活時に気をつけて欲しいこと

体重減少が耳管へ影響があると考えられる場合
体重の増加もしくは維持
過度なダイエットを控える
多めの水分摂取
スカーフ・ネクタイの活用
鼻すすりをやめる

 

※スカーフ・ネクタイの活用
症状が出現した時に、首に巻いてあるスカーフや、男性ではネクタイを少し締めることで、症状を改善させることが可能です。
これは、頭部からの静脈の戻りをあえて少し悪くし、そのことが翼突筋静脈叢の容量を増やしてあげることになり、耳管の内腔を狭くすることに繋がって症状を軽減させるという方法です。
仕事中に突然、症状が強くなったときに可能な対処方法です。

夏場たくさん汗をかくと症状が出る方もいます。
1日の中で朝型に症状を認めるという方もいます。
これは身体の水分がなくなり脱水傾向になるために起こるので、しっかりと水分を取る必要があります。

お風呂に入ると楽になる方は、湿度が良いと考えられ、耳管が開放している際に乾燥傾向に向かって症状が出ていたのが、入浴により潤いが正常に近づき楽な状態になります。水分補給をしながらの入浴を心がけてください。

当院での鍼灸治療とスーパーライザーの併用療法

当院を耳管機能不全で受診される方は「耳鼻科ですでに一定期間の治療を行っているにもかかわらず、症状がなかなか思うように改善しない。」という方々が中心です。その他には副鼻腔炎をお持ちの方や花粉症の時期や風邪症状によって耳管の症状が悪化した方、耳管は元々弱いことを自覚されていて、飛行機で耳抜きが苦手や中耳炎を頻繁になっていた方が最近ストレスがかかってという方がいます。

耳症状の増減にも「ストレス」「過労」が大きく関与し、その積み重ねで睡眠障害に発展して、さらに悪化という方が多くおられます。

また、耳症状以外にも

呼吸器トラブル 鼻炎
気管支炎 ドライアイ
円形脱毛症 末端冷え性
頚肩の痛み 生理痛や生理不順
筋緊張型頭痛 腰痛

といった自律神経症状を訴える方が多くおられます。

耳管機能低下症の場合は「耳管がもっている機能を正常化する」ということを目的に全身の治療を行うことで、自律神経を整えながら、「疲労の回復」「ストレスを軽減」「睡眠の改善」という点を「鍼」「灸」「スーパーライザー」を活用しながら治療していき、耳の症状を改善させていきます。

耳管を含めた耳周辺の症状を改善する目的で治療を行なっていますが、鍼灸師という立場で治療を行う場合に、鍼灸や東洋医学が持っている身体全体を俯瞰して捉え、全体の機能を回復させることで結果として患者さんの困っている症状が改善する。

西洋医学には他の治療方法が存在しないことから、耳管機能低下症は鍼灸こそが第一選択になって良い程に効果的と考えています。

日頃参考にしている耳鼻科情報

『突発性難聴update』
ENTONI 183号
『ストレスと耳鼻咽喉科疾患』
ENTONI 121号

『聴覚異常感をどう診る・どう治す』
ENTONI 188号

『耳鳴のすべて』
ENTONI 186号

『驚異の小器官耳の科学』杉浦綾子

『鍼灸Osaka136 耳鼻咽喉科疾患を治療する』

その他にも医学情報を集めながら、目の前の患者さんに何ができるのかを考え続けています。

治療の目的及び方法

全身の状態を良くすること

「耳症状だけを治療するのではなく、土台部分からしっかりと治療を行う。
その結果、体調が回復し、耳の症状を改善させる」

これは鍼灸治療を専門としている者からすると基本的な考え方ではあるものの、患者の方々にしてみれば遠回りになる印象や、それで本当に良くなるの?という気持ちになることも理解できます。

実際に当院で行なっている症状の中で、耳鼻科疾患の例を出すと
「突発性難聴は内耳の炎症が母体にあるため、内耳の血液循環を目的に集中して行うため、スーパーライザーを内耳へ照射する」
「顔面神経麻痺は、顔面部の神経の再生を促すために顔に鍼をする」
という原因局所へ注力する。
鍼灸の治療戦略の中でも、現代医学的にアプローチを行う症状もあります。

一方で、皆さんが悩んでいる「耳管機能低下症(耳管開放症/耳管狭窄症)については、全身的な治療が必須と考えていて、実際その治療で成果が出ています。

治療部位は、耳、顎周辺はもちろんですが、原因によっては鼻周辺の治療も。
背中は内臓と関連しているツボが並んでいる大切な治療部位ですし、
お腹や手足にも耳に関連しているツボがあるので治療に使用します。

体質やきっかけによっても異なる鍼灸の治療

代表的な東洋医学的な「証」
証は現代医学の診断名のようなものです。

東洋医学では
「同病異治」同じ病名であっても異なる治療
「異病同治」異なる病名であっても同じ治療
という臨床スタイルが存在します。

そのため、耳管機能低下で同じような症状を持っている方に対しても

「肝鬱気滞」
ストレスで悪化
首・肩凝りもあり、ひどくなると頭痛を訴える方
身体の筋緊張をとっていくことで一緒に症状も寛解していきます

「脾気虚」
栄養失調気味であったり摂食障害もこの病態に含まれてきます。
鍼灸院に来院される耳管開放症の方は摂食障害の方の来院はこれまで経験がなく、ダイエットを目的で栄養失調になっている方や
ストレスによって、食が細くなっている方

お腹の中脘や気海、背中では膈兪、脾兪穴

「全身状態を良くする」という表現の中に、患者さんの個々にオーダーメイドで治療をチューニングをしていく必要があります。

耳管の治療で大切な頚部の治療

ここまでは全身状態を良くする鍼灸治療について書きましたが、より耳管に近いところへアプローチも行います。
しかし、耳管という場所は体表からは到達できない深部に存在します。
そんな時に、大切なのは、そこに影響している神経を活用するという方法です。

当院で使用する頚部の治療の位置は、舌咽神経ブロックに準じた刺激部位とほぼ一致します。舌咽神経ブロックの適応は主に舌咽神経痛に対して行われており、舌咽神経痛は激しい一過性の痛みが、耳・舌後方・扁桃窩などに発生する。 舌咽神経は知覚・運動・味覚を含む混合神経であり、知覚においては鼓室・鼓膜・乳突蜂巣・耳管 などを支配している。

鍼治療の際には患者さんに鍼の刺激感覚を確認しながら鍼を行なったりしますが、鼓膜の周辺が刺激されている感覚があったりします。この鍼刺激は舌咽神経の枝である耳管枝に入力されていることが推察されます。

舌咽神経と中耳、耳管粘膜との関連性について報告されている。鍼刺激が舌咽神経の耳管枝に入力され、耳管の粘液腺より分泌液が発生し、耳管の開放症状を寛解しているのではないかと推察される。

まだまだ「耳管機能低下症」や「耳管」に関する研究は盛んではありません。
「耳管」を専門にしている耳鼻科医も少ないため私たち鍼灸の領域でも治療を行い改善している症例は多く「治療方法はどうするの?」
「患者さんの体質、ストレス、病態によって治療方法を使い分ける」「頚部の治療も耳の後ろを中心に行うよ」ということはお話しできるのですが、
なぜその治療で良くなるのか?というところでは明確な答えには辿りつけておらず、文献などからより再現性を出すため、論理的に治療を構成するために思考しておりますが「断言」「断定」「証明」ができないため「推察」という表現に留めております。

「推察」という言葉が、患者さんにとっては「結局わかっていない」=「自信がない」というメッセージとして受け取られては嫌だなぁと思ってこのように書かせていただきました。

症 例

30代女性 職業:医療関係 耳管開放症(右)

耳の違和感が出る前から、冷え性、下半身の浮腫み、便秘、頸肩の痛み、腰痛持ち

数年前から右耳に違和感が出て、自分の息の音が響いていた。

時々違和感を感じるくらいだったので、気にしなかった。

ここ1~2週間、酷く違和感を感じるようになり、仕事が休みの日に病院へ。

休みの日は症状が出ないので、聴力検査もしなかった。

疲労やストレスがかかっているのだろうということで、漢方ツムラ108:人参養湯を処方された。

飲み始めると、便秘が解消された。

仕事の日は寝起きから耳の調子が悪い。仕事するとさらに悪化。

お辞儀をするように頭を下げると症状が無くなるが、頭を戻すとすぐに症状が出てくる。

自分の息の音で、先輩方の声が聞き取りづらく、何度も聞き直してしまう。

家に帰ると徐々に治ってくる。

仕事で疲れているので、早目にお布団に入ってもなかなか寝付けない。

病院を受診して5日後に鍼灸院へ

⚫︎治療
ー鍼灸治療1回目ー

仕事の仕方を変えれないかを一緒に考えて、実行してもらうことにした。

鍼灸で頸、肩、腰、背中の筋肉を緩める。

治療をした夜はすぐに寝付けた。

ー鍼灸治療2回目ー

(約10日に1回鍼灸治療している)

身体に大きな変化無し。

仕事の仕方を変えることができて、気持ちが楽になった。

ー鍼灸治療3回目ー

頸、肩、腰、下半身の浮腫みが少しずつ軽減してきたのがわかる。

耳の調子も良い。

ー鍼灸治療4回目ー

(調子が良い為、治療期間を1,5倍空けてみた)

身体全体の調子が良い。

本人としては、治ったかもしれないと思う日々。

頸、肩、腰、が痛いと思うことが無くなった。

考察)このように、鍼灸治療を行なっていくとかなり早い段階で、症状の変化を実感でき、不快な症状と向き合う時間も少くなる中で、鍼灸以外にも身体に影響を及ぼしているもの。
今回の方で言えば仕事が影響していると考えられたので、仕事の流れを相談して自分のキャパシティを意識していただき容量以上の仕事を請け負わないこと。また、体調が回復すれば容量も増やせること確認しながら調整を行う。

症 例

 

40代男性 職業:内科医 耳管開放症(左)

6年前より耳の不調を自覚
耳の詰まり間が主な症状で、耳鼻科を受診したところ耳管開放症と診断を受ける
その頃は、他県に住んでいた。
漢方薬(加味帰脾湯)を処方され服用開始
薬疹が出たため中止。
耳症状も我慢できる程度だったため、様子を見ながら付き合っていた。

最近になって症状が強くなった
この症状が強くなったタイミングと同じ頃に少し体重が減ったのか?
「最近痩せた?」と聞かれることが増えた。

耳鼻科を受診するも「OPEをする程でもないから様子みるしかないですね」
「体重をもう少し増やせたら、増やしてください」ということを指摘される。
以前の薬疹の影響を考慮して、薬は処方なく、鍼灸治療を希望して来院

⚫︎治療
男性ということもあり体重減少は女性程意識をしていないが、40代男性としては明らかに細い
「脾気虚」と推察して治療を開始。

コロナ禍ということもあり職業的にも負担が多いで過労も重なっていることも体重減少の原因と考え
首肩は優しく鍼を行い、背中の経穴へお灸を中心に治療を行う。

「鍼をするのか」
「お灸をするのか」
一つの目安として、当院では筋肉が緊張しているところには、鍼で緊張を緩める。
一方で、弛緩しているところ。雨上がりの水たまりがなくなったが少しぬかるんで力がないような場所はお灸を行うようにしている。

この方の場合には背中は力がない状態のためお灸をすることで、循環を生み出すことを狙っている。

治療後翌日から耳の詰まり感が下がっていること
また、耳が気になる時間帯が減っていることを自覚。

症状そのものは、1週間に1回のペースで4週間治療することで寛解し、
その後は、疲労などが気になる際に早めの手当として治療を継続的に行いケアを行なっている。

⚫︎考察

 

症 例

50代女性 職業:主婦 突発性難聴(仮)→耳管狭窄症(右)

夏に右の聴力低下を自覚。
「右から人に話かけられるのと、左から話かけられるのとで違和感があり、耳鼻科へ」
突発性難聴と診断を受けステロイド治療を開始。
聴力が上昇傾向を示し、アデホスコーワを追加処方

聴力は回復するも「耳のつまり間が時々ある」
症状には波がある
日によって異なる
聴力低下を起こした夏と比較すると症状は軽くなっている。

⚫︎治療
夏には聴力低下があったことから、まずは突発性難聴の治療を優先的に行い内耳の循環改善を目指す。

内耳の循環を目指すとはいえ、星状神経節へのスーパーライザーの治療は行い、首肩への治療も行うことから
内耳循環だけではなく、もう少し範囲を広げて網羅的に治療を行う。

鍼灸治療以外の日でも難聴の治療を優先し、スーパーライザーの照射のみを行う日を設け治療を継続
1週間に1度鍼灸+スーパーライザーを行い、週に2ー3回別日にスーパーライザーを照射。

治療を行い聴力の改善は認めるものの、耳の詰まり感が著効しない。
症状の波は小さくはなってきているが、風邪を引いた先に耳の詰まり感が悪化したことから
「耳鼻科の先生に耳管の問題はないかも相談してみてください」と伝えるも耳鼻科を受診し「耳のつまり感は突発性難聴によるもの」という診断だってため、別な耳鼻科を受診を促し、そちらで初めて耳管狭窄症と診断を受ける。

突発性難聴とは別に、耳管狭窄症が潜んでいたことが推察される。

レントゲンの結果、副鼻腔炎も持っていることがわかり、そちらも治療を開始し、鍼灸治療と併用することで、
耳のつまり感がなくなった症例。

⚫︎考察

私たちも大切にしていることが、盲信しない。
目の前で起きている患者さんの状態は変化しているため、病院での情報は大切な医療情報として扱い参考にさせていただくことばかりであるが、
一方で全てが正しいわけではない。
今回の症例でも、「日によって症状が異なる」この傾向は耳管の症状では頻発するが、突発性難聴では少ない。
おかしいなとは初診時にも思ってはいるものの、明らかに耳管を疑う所見も少ないことから二つの治療の共通点を網羅的に治療を行うなどしながら様子を見ていただが、経過を観察する中で、風邪をきっかけに耳の詰まりが増えることからこれは何か炎症が悪さをしているなということで、もう一度耳鼻科の先生と併用して治療を行う必要がある。という判断から病院を紹介し治療を継続。

幸い、良い耳鼻科の先生であり、困った時に頼りにさせていただき安心してができた。
鍼灸治療は1回の治療で約1時間の治療時間を要する。
その時間の中で、いろんな情報を患者さんからいただけることは、耳鼻科の先生方の診療にかけることができる時間とは大きく異なることが一つの鍼灸治療の特徴でもあり、この時間というのは私たちが診療でも大切にしていることです。
患者さんと直接対話する時間。身体と対話する時間どちらも鍼灸治療の大きな特徴です。

初診料

 初診料
 一般  2,200円
学生  1,100円

 

治療費

治療費
耳鼻科疾患 7,700円
一般治7 7,700円
学生 3,300円

※価格はすべて税込み価格です
※土曜日の診療は別途+1100円頂戴いたします
※日曜日と祝日は休診日です

現金以外にPayPay,Alipayなど、各種電子マネー、各社クレジットカードがご利用可能です


使用する鍼について

当院で使用する鍼は全て使い捨てのディスポ鍼を採用しており、お一人の患者さんに治療した鍼は全て医療廃棄物として廃棄しております。
鍼治療で使用する「はり」は先が注射針よりずっと細く、皮膚に滑り込むように刺さっていくため、刺激が少なく痛みを感じにくい特徴を持っています。

また、鍼を刺す際に、「鍼管(しんかん)」と呼ばれる筒状の器具を使うことで、刺す時の痛みを抑えられます。

この鍼管を指先で軽く叩けば、鍼先が瞬く間に身体に進入します。

これが日本が誇る「管鍼法(かんしんほう)」と呼ばれる江戸時代から続く特徴的な鍼の方法です。この方法で鍼をすることで、いつ刺されたかも気がつかない刺入を実現します。

 

鍼の太さについて

鍼治療が痛くないもう一つの理由として、鍼の太さがあります。

蚊が刺す感覚を痛いと感じる方は少ないように、当院で使用している鍼も非常に細く、蚊の口先とほとんど変わらない鍼を用いています。

150919-0016

よりやさしく、より再現性のある治療へ

SUPER LIZERの併療

当院ではSUPER LIZER(東京医研社)の近赤外線(直線偏光近赤外線療法)を鍼灸治療に合わせて併療しております。

SUPER LIZERは多くの大学病院で、多くの疾患・症状治療に使われています。

①近赤外線は身体の中の一番深くへ届く光です。
②直線偏光処理した光は、傷を早く治す力があると言われております。

この2つの特徴を鍼灸治療と組み合わせることで、より大きな効果が発揮されます。

深達性

体内の水に反応しない特殊な光を放出し、深部の神経節に照射(SGR:星状神経節近傍照射)を行うことで、星状神経節ブロック(SGB)と同様の反応を引き出すことが可能です。

スーパーライザーは他のヘリウムネオンレーザーや、赤外線治療器より生体深達性が高い波長帯を選択

①過剰ストレスによる緊張をときほぐします

スーパーライザーによる星状神経節照射(SGLまたはSGR)によって副交感神経の働きが高まり、リラックス効果が得られます。
これで、ストレスや不規則な生活によって出ていた自律神経失調による症状の改善を狙います。

過剰ストレスによる交感神経緊張は、徐々に、時に急激に、身体に影響を及ぼします。
ストレスに気づいてはいても、対処法が見つからないという方も多いのではないでしょうか?
ストレスは生活習慣病のリスクとして極めて重大なものです。
生活習慣病を発症しないためにも予防が大切です。

②全身で血流が良くなります

血行を良くする副交感神経に直接アプローチするため、照射が終了して15分後でも血行が良い状態が続きます。
血行が悪い所には栄養や酸素が届きづらく、創傷治癒が遅れ、免疫力の低下、老廃物の代謝も阻害され、老化が進みます。
スーパーライザーで手足だけではなく胃腸などの内臓や脳を含めた全身の血行を良くしておくことは、今ある症状を取り除くことだけでなく、将来の病気の芽を摘むという予防医学効果も期待できます。

星状神経節照射後の手と顔の温度変化
スーパーライザーの照射によって15分後の体温が上昇している様子

 

【耳鼻科疾患 担当鍼灸師】


遠藤彰宏 AKIHIRO ENDO
はり師
きゅう師
あん摩・マッサージ・指圧師
大阪府出身
森ノ宮医療学園専門学校 鍼灸学科卒業
京都佛眼鍼灸理療学校 専科卒業
所属団体
JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)
鍼灸SL研究会
日本臨床鍼灸懇話会
日本鍼灸師会
全日本鍼灸学会
福岡県鍼灸師会
福岡市鍼灸師会

当院での治療が皆様の一助になれるように、真摯に臨床に取り組んでまいります。

田中はり灸療院 遠藤彰宏

その他,当院の専門分野


男性不妊のための鍼灸治療

造精機能を高め精子の数と運動率の向上へ


椎間板ヘルニアによる
「痛み」「痺れ」を改善

MRIで見つかる異常とのギャップ
局所炎症を改善

 


ぎっくり腰・急性腰痛

鍼灸こそがぎっくり腰に対する
最高の治療

 1-2 回の治療で改善


「膝痛」「変形性膝関節症」

変形の程度と膝の痛みは比例しない
滑膜の炎症を抑える

 


「四十肩」「五十肩」

それぞれの時期に合わせて
「治療」や「リハビリ」を指導

 

電気を流す美容はり

「全身の調整」×「美容はり」
田中はり灸療院のSpecial

 

逆子の鍼灸治療

 エコーを使って胎児の位置を確認

 

突発性難聴の鍼灸×レーザー照射

内耳循環に集中させ改善を狙う
聴力固定までに行いたい
耳鼻科との併用療法

顔面神経麻痺「Bell麻痺」「Hunt症候群」

顔への適切な指導とリハビリの徹底

 


耳鳴りに対する鍼灸治療

「内耳」×「自律神経」×「認知行動療法」

耳管機能低下症に対する鍼灸治療

「耳管開放症」「耳管狭窄症」
「自律神経を整え調和へ」