01頚部からの痛みは多彩

当院の頚部由来の痛みの要点は3つにまとまります。

①大切なことは、まずその痛みがどこから発生しているのかしっかりと見極める力
当院で扱う痛みは、寝違え、頚椎の関節周囲の痛み、神経根症、椎間板ヘルニアによる痛みが頚部の疾患としては多く来院されます。肩凝りだと思って、肩、背中を揉んでもらったら改善しない。レントゲンを撮ったら異常がないと言われた。また、肩の痛みは、心臓や内臓が原因だった。これらは、しっかりと問診・診察を行い判断する必要があります。
恩師の教えの一つに、「まず患者さんを傷つけないこと。自分たちの仕事の範囲をしっかり見極めなさい」があります。当然、心臓・内臓が原因であれば病院への診察や当院から救急車を要請する必要もあります。椎間板ヘルニアという病名の中にも、何年も前に診断をされて悪い状態が続いている(停滞型)。昨日転倒して頭を強く打ち、手に痛みとしびれが起きている。症状はどんどん強くなっている(進行型)。病名だけではなく、現在の症状がどういう状態にあるのか推察する必要があります。
当院は、安心して治療にお越しいただけるように「治療技術」はもちろんですが、徹底して「診察力」を磨いてきました。

※整体などの事故の多くは、外からの圧力によって骨折も多いが、疾患を見逃す事故も。知識もない素人の方に身体を任せるのは非常に危険です。また、ご自身の身体を任せるという患者さんご自身の判断にも非常に大切な決断と責任が迫られます。

頚椎椎間関節性タイプの痛み

image104頚椎の椎間関節の周辺で炎症が起きるとその痛みは、頚だけでなく、肩や肩甲骨の内側に痛みが生じます。
当院に来院するまでに、「マッサージに行ったが、改善しない。」「整骨院に行ったが、改善しない。」といって来院されます。
肩や肩甲骨の内側の痛みが、筋肉が原因であれば、肩を動かした際に痛みが起きるが、頚椎からきた痛みの場合には頚部の動きで痛みが変化します。ただ、痛みだけを聞いて、そこを刺激するなら素人でもできますが、残念ながら当院にお越しになる方は、きちんと診察を受けずに施術され何も改善されずに来院されています。
頚椎は7つ(C1-7)とあるが、それぞれの間に関節面があります。症状の発信源となる高さによって、痛みの部位は、右図のようにC2-3であれば頚の上部から後頭部にかけての痛み。C5-6、C6-7では、肩凝りに近い痛みが生じます頚椎椎間関節の痛み

症例 60歳 男性 左肩甲骨内側の痛み 左頚部の凝り感

1週間程前より、特に思いあたる原因なく発症。
少しずつ痛みが強くなり、先週の土曜日に痛みが最も強くなる。
1週間経過しても症状が改善されないため当院を受診。
以前より肩凝りは、経験あるが、今回の痛みは今までとは違う。

所見)
・胸痛、息苦しさなし
・冷感、冷や汗なし
・頚部の動きに連動して、肩の痛みが増える

補足)
今回の症状には、直接的な原因はないものの、身内の病気のことで心労が重なったことは、痛みの原因の一つの要素としてご本人は自覚している。

評価)頚部の動きで痛みの再現があること、肩の動きでは痛みが増強されないことから、
肩甲骨部の痛みは、筋肉性よりも頚椎下部周辺からの痛みと推察して治療を行う。

治療)若い頃に鍼治療の経験があり、刺鍼の際に鍼が好きということだったので、置鍼だけではなく、手技鍼(雀琢術)を行い心地よいひびきを出しながら治療を行う。
治療中にも、「先生!そこが悪いんです。」というマッサージにも似た感覚を再現しながら鍼治療を行う。治療直後に痛みは10→3へと変化。痛みの質がピリピリとした性質だった状態から角が取れたような丸みのある鈍痛へと変化。

この症例は、3日後に治療に来院された際には、すっかり痛みは良くなり、普段感じていた肩凝りの症状だけになっていたため、肩凝りの治療と、心労もあったことから、ストレスに対する治療穴(身柱、百会穴などを追加)

筋筋膜性疼痛症候群:トリガーポイントタイプ

section-neckその他の痛みのタイプとして、米国のトラベル博士が中心として研究された筋肉が起こす痛み、「筋筋膜性疼痛症候群 (トリガーポイント:引き金点)」という考え方があります。
トリガーポイントは、筋肉を触った差異に索状の硬結というどくとくなしこりがあります。図中の×印にトリガーがあると赤の部位へ痛みが起こります(関連痛)。この際治療ポイントは、赤い痛みの部位ではなく、×印の部位が治療のポイントとなってきます。

鍼灸治療で用いる経穴とも非常に一致しており治療点としても有効なポイントです。

症例 男性 (右頚~肩にかけての痛み)

image121#1 右頚部から肩にかけての痛み
#2 頚の運動痛(左に向くと痛む)

1か月前より誘因なく発症。
整形外科Dr.「肩の痛みだからレントゲンを撮影しましょう。」
肩のレントゲンでは問題なし。
整形外科Dr.「肩は異常がない。もう少し様子をみましょう。」
患者     「頚からきているんじゃないの?」
整形外科Dr.「その可能性はあるので、MRIを撮影しましょう。」
MRIの写真上述
整形外科Dr.「いくつかの頚椎で神経を圧迫しているが、手術をする程ではない。」
「牽引をして様子をみましょう。」

2週間通院するも変化がない。
知人の紹介で整体師?トレーナーのところへ3回通院も変化ない。

以前、当院で膝痛が良くなったことから鍼治療を思い出し当院を受診。

当院での診察等)
再診時に、MRI画像をお持ちだったため、画像をPCにて確認を行う。
C4-5,C5-6が画像で神経を圧迫していることを確認する。
患者さんが訴える痛みの部位としては、右図のC4-5、C5-6エリアとも一致をする。
頚椎椎間関節の痛み
遠藤「この痛みはどこからきているのか。」
ここで3つのことを考えました。

①頚のヘルニアや骨の変形によって神経を圧迫している
②頚の頚椎周辺の異常によって痛みが出ている
③頚は頚の筋肉の痛み、肩は肩の筋肉の痛み

このうちどの可能性が高いかを知るために詳しく問診と身体診察(理学所見)をとります。

痛みの特徴)
・朝起きた時に最も痛みを感じ2時間近く痛みを自覚する
・肩の動きでは痛みが出ない
・頚は左に向きにくく、右の頚に痛みを感じる

→肩の動きで痛みが肩周辺に出ないことから、肩の筋肉の可能性は低いと考える

理学所見)
・痛みの範囲が上肢および手にはない。
・しびれなし
・筋肉の痩せなし
・反射 上腕二頭筋反射 正常左右差なし 上腕三頭筋 正常 左右差なし
・ナチュラルジャクソンテスト(+)
・ナチュラルスパーリングテスト(+)

→デルマトームに沿った痛みもなく、しびれもない。筋委縮もないことから神経根の障害も否定的。

問診と身体所見からの考察)
頚の神経根周辺でのなんらかの異常により、痛みが関連痛として誘発しているのではないか。
トリガーポイントという表現もできるが、頚部のC5-7を中心に治療を考える。

治療)
1-3診)
①頚部に浅く鍼を刺し、スーパーライザー照射
②星状神経節照射(SGB) 手足の関連のある経穴へ置鍼
③背部の兪穴へ置鍼

症状は、少し柔らかくなる程度。痛みが増すことはない。
この頃、奥様が圧迫骨折をしたため、家事などが増えたことも症状の回復を遅らせている一つの要因ということがわかる。

4-6診)
①頚部の鍼の深度を変更し、スーパーライザー照射
②星状神経節照射(SGB) 手足の関連のある経穴へ置鍼
③背部の兪穴へ置鍼

起床時の痛みが出なくなり大変喜ばれる。
考察)治療のポイント(深度)を変えることで治療効果が劇的に変化。
浅い鍼で効果的な患者さんも経験することから、問診、鍼の反応を見極めて治療を行っているが、思期待した変化(治療効果)がない場合には、治療方法を次の段階へSTEP UPを行い、症状の変化を狙っていきます。

MRI像からは、もう少し時間がかかることが予想されましたが、3週間の治療期間で寛解できてよかったです。やはり椎間板ヘルニアの影響は少なかったということがいえると思います。

症例 27歳 女性 頚部、前頚部、左肩甲骨上角への痛み

5日前に発症。この発症の時点では、「あー寝違えを起こした。」と考える程度の痛みで我慢もできていた。そのまま仕事にいき、二日目に症状が悪化、左上肢から母指にかけての痛み(しびれはない)を自覚。その日をピークに少しずつ痛みは和らいでいたが、昨日仕事終わりで習い事にいった後より頚の痛みが悪化し、昨日はじっとしていても痛むがあり眠ることができなかった。

本日仕事にいくも、痛みのため午前中で早退し来院。

所見)
・胸痛、息苦しさなし
・冷感、冷や汗なし
・頚部の動きに連動して、肩の痛みが増える
・現在は、上肢痛はなし
・最も痛いのは、左の下位後頚部(C5-7)付近
・前頚部への痛みと、肩甲骨に痛みを自覚
・頚はゆっくりなら動かせるが、右に向くことができない。

評価)安静時に痛みがあるため、鍼灸院でも治療をしてはいけない病態、病気(感染症や、化膿性疾患等)を疑うも痛み以外に随伴症状がなく、経過もこれまで波があるため否定的と判断。
→鍼灸治療を行いながら、もう一度疑うべきか精査を含む

発症2日目に痛みが上肢に放散したことは、神経根付近への血管の攣縮や圧迫など神経症状を出すだけの炎症が起こったためか。
→その後の経過で症状は、減少傾向にあったため、その後の炎症の程度は和らぎ、椎間板ヘルニアなど神経根を障害するような病態も否定的。

昨日より、痛みが悪化しており、なんらかの負荷がかかり傷口を広げてしまったのか。

今回の症状の原因としては、後頸部の筋・筋膜を想定しながら、そこを始点として、多彩な放散痛として各所に痛みが出ていると考える。
寝違えとしては、経過が単純ではないため、念のため炎症性の疾患や、椎間板ヘルニアなども考慮しておく必要がある。

治療)
①痛みのため筋肉だけではなく、神経性の緊張も強いため、星状神経節周辺へスーパーライザーの照射を行い、前頚部、前胸部へ置鍼。
②左の頚部全体へ置鍼。(側臥位)
この時点で治療前の痛み10から7へ減少。鍼灸治療への反応は良好。
③後頸部を中心に置鍼
痛み さらに減少し、5
④後頸部が痛みの原因(トリガー)と判断し、治療の追加
痛み さたに減少し、ほぼ痛みのない状態に。
経過)翌日メールにて、「痛みはほぼないので、このまま様子をみてみます!」とご連絡をいただく。