移植から妊娠維持のために使用するエストラーナテープ その1
移植から妊娠維持のために使用する
エストラーナテープ その1
体外受精、顕微授精したのち、胚移殖する周期で使用するエストラーナテープですが、「使っているけどどんな効果なのかな」、「いつまで貼ってればいいのだろうか」、「貼ってるだけだけど大丈夫かな」と色々思う方も少なくありません。
来院される患者さんからもよくある問いです。
「自分の治療って何してるんだろう?」と疑問を感じ、知りたいと向き合うことはとても大事だと思います。自分自身のお身体ですから😊
今回はエストラーナテープについてお話ししていきたいと思います。
女性ホルモン
コレステロールを原料とする性ステロイドホルモンであり、エストロゲンとプロゲステロンが存在します。
エストロゲンは卵胞の発育とともに産生されるため卵胞ホルモンと呼ばれ、プロゲステロンは主に黄体で作られるため黄体ホルモンと呼ばれています。
作られたホルモンは、卵胞だけだではなく、子宮や乳房、膣粘液、基礎体温、身体の健康維持などに作用し、特に子宮や膣に対してお互いに拮抗する作用を示します。
ここでは、エストロゲンについて書いていきます。
女性ホルモンであるエストロゲンは総称であり、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)の3種類に分かれます。
この中で最も強力でエストロゲンの活性が強いのはエストラジオールであり、不妊治療の専門病院で測定される血中エストロゲンの主成分になります。
子宮内膜に対するエストロゲンの作用は、時期によって変化してきます。
月経が始まり、エストロゲンが上昇し始めると、らせん動脈を増殖させ、子宮内膜の再生が始まります。
子宮内膜が少しずつ増殖し肥厚し着床の準備をしていく「増殖期」とプロゲステロンとともにらせん動脈をさらに増生させ、子宮内膜を着床に適した状態にする「分泌期」に分かれます。
不妊治療で使用される薬の種類
主成分は、エストラジオールとなり、経皮剤(貼り薬、塗り薬)と経口剤(飲み薬)があります。
不妊治療で使われるのは、エストラーナテープ(経皮剤の貼り薬)が多いです。
不妊治療でエストラーナテープを使用することが多いのは、経皮剤の特徴にあります。
①肝臓での初回通過効果を避けることができます。
初回通過効果とは、口から薬を摂取した際に、腸で吸収され、薬の成分は血流に乗ってまず肝臓に送られ、肝臓の酵素によって薬が代謝されることを指します。
この代謝で薬の効果が落ちる可能性があります。
しかし、経皮剤だと皮膚から吸収され直接血中に入るため、肝臓を通らずに全身に取り込まれた結果、効果が落ちることなく、目的の場所へ薬を送り届けることが可能です。
②消化管や消化管内の食物の影響を受けてないため、血中濃度を長時間にわたって一定に保つことができます。
③皮膚に貼るだけなため簡便であり、経口剤が苦手な方でも使用しやすいです。
移植から妊娠維持の効果
胚移植への目的は、子宮内膜の増殖と肥厚作用です。
凍結胚移植時の至適な子宮内膜厚は8.2〜10.0mmと言われています。
着床後に、胎嚢確認、心拍確認を行った後、9週前後で不妊治療の専門病クリニックを卒業する方が多く、妊娠維持の目的でその時期まで、エストラーナテープや膣錠(プロゲステロン)でホルモン補充を引き続き行います。
陽性反応後もホルモン補充を続ける理由の一つとして、妊娠初期は胎盤が未完成な状態であり不安定な時期だから、ということがあります。
エストロゲンとプロゲステロンは、妊娠維持にも必須のホルモンです。
妊娠後、黄体は妊娠黄体へとなり、hCGの刺激によってエストロゲンとプロゲステロンを分泌し妊娠を維持します。
胎盤形成が開始されるのは7週頃であり(スイッチング)、この二つのホルモン産生が妊娠黄体から胎盤へ徐々に移行し、12週〜15週で産生場所が胎盤になります。
妊娠黄体から胎盤へ移行する不安定な時期まで、ホルモン補充をしっかり行っていきます。
使用方法
月経1〜3日目から開始し、下腹部かお尻に2日毎に貼り替え、月経15日目前後から黄体ホルモン製剤の併用を開始することで胚移植の日が決まります。
副作用として、乳房痛、不正出血、帯下、貼った所の紅斑・かゆみ、吐き気、頭痛などの体調不良を訴えることがあります。
ホルモンのバランスが自然周期と異なることで上記の症状以外にも出ることがあります。
紅斑・かゆみの症状が一番多く、貼る場所を変えたり、経口、塗り薬など形状を変えて対応してくださる場合もあります。
このような症状で気になる方は先生に相談してください。
(https://tanaka-harikyu.jp/エストラーナテープ②/)
不妊治療でよく使われるエストラーナテープのお話1(英ウィメンズクリニック)
(文責:竹永百華)
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