先生の鍼はなぜそんなに優しいんですか

先生の鍼はなぜそんなに優しいんですか

これは以前「他の鍼灸院」で治療を受けた経験がある患者さん。
鍼灸学校の学生さん。
一緒に働く仲間からもそんな評価を受けます。

さぁ。本当に自分の鍼は優しいのか。

真剣勝負してきた鍼

鍼治療の教育方法の一つとして、「技をもっている者」から「持たない者」へ鍼治療を実際に受けながら鍼の感覚を受け取る。
またあるときに、その「感覚を知っている者へ」「技を持たない者」が治療を行い再現できているか。再現できていないのか。

当然再現できないために、「何が」匠と異なるかを必死に考え、試行錯誤する。

初代の鍼を私が受けない「何が足りないか考える」
「初代の鍼を知っている患者さんに鍼をおこない未熟さを痛感する」

自分の身体の感覚に刻まれている鍼は大阪時代の米山由子先生、米山榮先生
福岡にきて田中謹悟、田中正治の鍼。

あとは遠藤真紀子の鍼や一緒に働く仲間の鍼。

それぞれが臨床の現場で真剣勝負をしてきている鍼。

鍼が上手くなりたい。
鍼で患者さんに役立ちたい。

それぞれの先生方が、目指す鍼があった。

弟子との違い

これまで昭和まで鍼灸院の多くは弟子教育の中で、鍼灸の技術を伝承してきた歴史がある。

その師弟関係の中で師匠は絶対的な存在であり、師匠の技術のみが目指すべき。

情報も限られているし、他と比較することもない。

そんな時代。

例えば、先代の田中正治の時代であれば、「お前の師匠はどんな鍼をするんだ?」学生同士で交わす会話の中で比較する程度。

でも、私の場合には内弟子を経験していない。

そして、田中はり灸療院にきたのも弟子という立場ではないため、
「素直に受け入れる」という姿勢ではなく。

「この先生の特徴はなんだろう」

「自分に活かせるところはどこだ」
自分の技術に活かすべき優先順位をつけながら課題を見つける

「絶対にできない技術はどこだ」
自分の技術では取り入れることは難しいだろうという劣後順位をつける。

普通の弟子であれば許されない行為。

技術を因数分解する

 

刺鍼のポイント「圧痛」「緊張」「弛緩」
押し手「軽い」「重たい」
切皮のリズム「軽快」「重厚」
刺入スピード「ゆっくり」「速く」
雀啄「細かく」「大きく」
捉える鍼先の感覚「優しい」「重たい」
使用する鍼「細い」「強い」

シンプルに分解すると簡単な項目を上げるだけで、このような組み合わせになる。

この組み合わせによって、表現される鍼が大きく変わってくる。

先にお断りすると、どれがいい。どれが悪いというものでもない。
正解すらない。

私自身は、米山由子先生の鍼をうちたいに憧れて、米山榮先生の鍼はできないと感じた。
福岡へきては、田中正治の患者さんには評価されないが、田中謹悟の患者さんには非常に喜ばれた。

この差は一体なんだろう。

一方で、真紀子は田中正治の患者さんには非常に評価されてきた。

この差は一体どこからくるんだろうか。

一つ言えることは、私はただただ優しい鍼をうちたいって思い続けている。
きっと誰よりも。

だから、どうしても師匠がこう!って言っても譲らないところがある。

きっと時代が違えば、自分は鍼灸師を続けることはできなかっただろうと思う。

自分が鍼を受けるときに
大事にしている感覚

鍼を受ける際に、
術者は鍼を刺すポイントを選び、押し手をして、鍼管を立てる。

ここまでの過程の中で、「この後の鍼の良し悪しがわかることがある。」

一部例外があり、「この鍼、痛そう」って思っているけどそうではないことがある。
その先生は、自分の持っている個性をその先の切皮や刺入操作で活かしている。

私はただ、この過程で鍼を刺すポイント選びの時点で、「痛覚閾値が異なるのではないか?」という仮説を立てながらポイントを選ぶところに重きを置いている。

そのポイントの選び方によって、自分の鍼の表情、音色は変わり。
自分らしさが出てくる。

私の鍼が私であり続けるために、今日も一つの仮説と向き合いながら鍼をしたい。

(文責:遠藤彰宏)
過去の発表:「患者さんから学ぶ私の鍼の特徴」(日本臨床鍼灸懇話会

学生さんに読んでいただきたい参考図書

「鍼のひびき」鍼灸OSAKA 72号 米山由子先生の到達した世界―”タッチ(触れる)”にすべての感覚を研ぎ澄ませる―/鈴木信 

「鍼の技術論」 米山榮 米山由子(医道の日本681号)

 

それぞれの個性豊かな鍼

#1
遠藤真紀子
CEO
(代表取締役社長)
はり師
きゅう師

#2
遠藤彰宏
CDO
(最高デザイン責任者)
はり師
きゅう師
あん摩マッサージ指圧師

#3
竹永百華
はり師
きゅう師

#4
荻侑花
はり師
きゅう師

#5
岩佐ゆかり
はり師
きゅう師
歯科衛生士

#6
福地弓子
Cabin attendant

#7
髙田良子
受付/事務
当院で30年勤務
どんなに昔の方からお電話をいただいても
「〇〇さんお久しぶりですね」
この安心感に私たちは支えられています。
当院のレジェンド。