福岡市中央区天神にある田中はり灸療院はこんな鍼灸院
福岡市中央区天神にある田中はり灸療院はこんな鍼灸院
鍼灸治療の「技」をつなぐ
私たちが代々受け継ぐべき鍼灸の形として、鍼治療「技術」があります。
当院では、日本式の鍼灸治療を行います。
昭和15年に田中僅悟が鍼術営業免許証を取得し、一度鍼灸院を開業し、その後、衛生兵として戦地へ。帰国後に福岡市中央区舞鶴(旧職人町)に鍼灸院を開業したのが当院の始まりです。
鍼灸治療は、『徒弟制度の中で各鍼灸院がもっている技術を伝承する』という文化の中で技術を伝承してきました。これは鍼灸治療に限らず伝統工芸、伝統文化などがそれぞれの技術や文化を守り、受け継ぐための方法でした。
田中僅悟は、鍼灸学校時代に恩師の野瀬先生と出会いました。
現在は、この野瀬先生のお孫さん、曽孫さんを当院で鍼治療をしています。
長年に渡ってご縁をいただけていることがとても不思議ですが、ありがたいことです。
2代目院長の田中正治、3代目院長の遠藤真紀子(旧姓 田中)は、二人は卒業した鍼灸学校は明治東洋医学院専門学校、森ノ宮医療学園専門学校と異なりますが、鍼灸学校の学生時代、卒業後に大阪府吹田にある「米山鍼灸院」で弟子入りし、田中正治は米山博久先生、米山由子先生より学び。
遠藤真紀子は、米山由子先生、鈴木悦子先生、鈴木信先生より学ばせていただきました。
遠藤彰宏も鍼灸学校で同級生だった真紀子の縁で、米山鍼灸院で学ばせていただくようになり、また、佛眼鍼灸理療学校時代には、三重県四日市市の米山クリニック(神経内科・鍼灸科)で研修を受けることができました。
田中はり灸療院の鍼灸の中の遺伝子の中には、田中家が3代に渡って治療を受け継いでいることだけではなく、米山鍼灸院の代々の先生方をはじめ、多くの先生に学ばせていただくことで、成長をし続けることができております。
まもなく田中はり灸療院は、70周年を迎えようとしておりますが、これからも学び、成長をし続け、丁寧に鍼治療を行って参ります。
田中はり灸療院 遠藤真紀子 遠藤彰宏 西村奈央
はりきゅう師の代表としての責任感をもちなさい
私たち二人が米山由子先生から頂いた言葉の中で、今も大切にしている言葉が
将来はりきゅう師として患者さんの前に立つときも、一般の方の前ではりきゅう師という職業を名乗るときでも「はりきゅう師の代表として責任をもちなさい」ということを常々言われました。
「鍼灸治療をはじめて受ける方は、わたしたちが行う鍼治療、言葉遣い、服装、鍼灸院の雰囲気」など田中はり灸療院での印象によって「田中はり灸療院はこうだった」ではなく。「鍼灸はこうだった」という鍼灸全体にも大きな影響を持っているということを自覚して行動をしないさい。
この言葉は、私たちが鍼灸治療をし続ける限りずっと大切にしていくべき行動の柱になっています。
海外から「日本の鍼灸」見つめる
鍼灸師になって色んな経験をすることができました。
その中で、印象的な出来事としてドイツより毎年日本に来日し、「日本の鍼灸」を学び、ドイツで鍼灸治療を行っているピーター・ザルツマン氏との出会いがその一つです。
海外から日本に旅行に来る方によって、日本の文化が見直されるように、私たちが日常行っている鍼灸治療にどんな魅力と特徴があるのかザルツマン氏との出会いによって、改めて考える時間を頂きました。
中でも2010年、2014年、2016年と3度、米山榮先生(神経内科医、医師)、尾崎朋文先生、鈴木信先生らとドイツのワイマールへ行き、ザルツマン氏はもちろん、日本の鍼灸に興味を持っている医師や、治療家、学生の多くの方と一緒学ぶ時間を持つことができました。
ドイツで紹介された日本の鍼灸治療の特徴は、
「日本の鍼は非常に細い鍼を使用することで、痛みがないこと」
「鍼が細いことによって、微細な変化を捉えることが可能となり、丁寧な治療が可能」
「米山榮先生が、神経内科医という視点、鍼灸師という視点の両面から鍼灸治療の一端を解き明かすことで、これまでの海外で広まった中国医学の理論とは異なる神経生理学からの鍼灸治療を学ぶ」
「解剖学の視点によって、鍼灸を安全に行うこと」
「ドイツではあまり馴染みのない小児はりという子供にする鍼を紹介」
この写真は第2回の研修後に撮影をした写真ですが、みんな笑顔でセミナーが充実していたことが伺えます。
この時の笑顔は、鍼灸治療に国境がないことや、鍼灸治療の未来は希望に溢れている。そんなことを考えさせていただけた貴重な時間でした。
(ドイツワイマールにて 『日本の鍼灸』2014.8 米山榮、尾崎朋文、鈴木信、湯谷達、遠藤彰宏、川口眞知子、森香り)
丁寧にわかりやすく
田中はり灸療院の一つの特徴として、鍼灸治療を含む東洋医学、中国医学に登場する「気」「血」「水」「陰陽」「五行(木・火・土・金・水)」という言葉をほぼ使いません。
ただ鍼灸治療を行うだけではなく、鍼灸治療が社会の中でどう評価され、一般化をしていくのかを考え、常に行動をしています。
患者さんにわかりやすい言葉で、情報をお伝えするために現代医学の知識で病気、お身体の状態、治療計画、経過予測を立てる努力をしております。
その際に、お話しさせていただく情報の根拠は、何かをできるだけ示せるようにしております。
「EBM(根拠に基づく医療)」
「EBM(根拠に基づく医療)」と訳されますが、エビデンスという点は、今後も必要な臨床の柱の一つであることは間違いありません。そのため、各疾患についての情報収集は日々の日課となるほど文献や、医学書と向き合います。
一方で、エビデンス、エビデンスという言葉が広がりましたが、エビデンスを出すことが難しい点も少し理解することができました。
臨床研究の莫大なお金と、時間がかかる点、臨床研究のデザインの問題、製薬会社の利益追求などなどあげればいくらでも出てきます。
鍼灸もエビデンスを証明したいと世界中で研究されていますが、証明までにはまだまだ時間がかかると考えています。
一方で、「NBM(物語に基づく医療)」こちらはご存じない方もおられるかもしれませんが、「EBM」と対比してよく出される言葉です。
より個人個人を活かして治療を行っていくことを主としています。
鍼灸治療の大きな特徴は、個人個人の人に合わせて治療を行える点があります。
「サイエンス」と「アート」
「アート」
鍼灸治療は「個人の技」に大きく影響をされてきたため、ある鍼灸院ではよくなったが、他の鍼灸院ではよくならない。
鍼灸治療の世界にも切り離すことができない「アート」が存在します。
故田中僅悟(初代 田中はり灸療院院長)、故米山由子先生(大阪 米山鍼灸院)の鍼はまさにアートでした。
「心地よくはりが響く」その後「身体が温かくなる感覚を抱き」不思議なことに「治療中から眠ってしまう」
そんな優しい鍼。
この鍼治療の記憶は、私たちの中にしっかりと遺っています。
他の鍼灸院にはない鍼灸治療の響き。このやさしい鍼灸治療を生涯に渡り追求していくことが私たちの一つの使命であり、次の世代へとつないでいく必要のある技術だと考えています。
そのため、2017年より、西村奈央と一緒に働くようになり、鍼灸治療の魅力を一緒に学び、成長するという新しい歩みをはじめました。
また、2018年には、若い鍼灸師の先生が当院を訪れ、鍼灸治療の技術を実際に体感しながら、いかに表現できるようになるか、インターンシップという形で、互いに学び合うことを始めました。
「サイエンス」
一方で、技術を追究するだけではありません。
より多くの方の希望を叶えるためには、高い再現性が必要となります。
大きな影響を受けているのが「JISRAM(日本生殖鍼灸標準機関)」や「日本臨床鍼灸懇話会」の存在です。
知識を集積し、技術を共有し、さらなる課題を探求することで、より高いレベルでの再現性を求め研鑽しています。
どちらの会も共通している点は、これまで培ってこられた秘伝を包み隠さず「すべては患者さんのために」の精神で行動をしています。
当院でも学会への参加や発表を繰り返しながら、より鍼灸治療をサイエンスへと近づける努力を行っております。
「こだわるのは、鍼・灸だけではなく鍼灸院レベル」
よく聞かれる質問に3代で鍼灸院をしていると、「何か秘伝みたいなのがあるんじゃないの?」という質問を受けます。
ある鍼灸院では代々に渡って同じ治療法、技術を伝承しようとしているところもあります。。
田中はり灸療院はそうではありません。
私たちは、常に挑戦者だと考えております。
時代の中で、鍼灸院に来院する方のニーズも大きく変わっています。
「痛みに対する鍼灸治療が主だった時代」
痛み治療が代表的だった時代が田中僅悟が開業した昭和20年代です。
鍼麻酔のブームなどもあり、さらに鍼灸治療の痛み治療へのニーズは拡大していきました。
この間に痛みへの理解は医学界でも大きく変わり、「局所」の痛みを訴えているところだけに目を向けるのではなく、患者さん「全体」という視点へと変化をしていきました。
「現代医療で、できることが増えた分、補完することが必要な時代」
現在医療の中で、薬物療法や、手術の発展に伴って医療は格段に進歩しました。その医療の発展の中で尚医学的には不明な点も多く、また現代医療の中でも限界はもちろんあります。
そこで鍼灸に求められていることは、現代の医療と合わせることでより患者さんの希望を叶えることができないか。当院で力を入れているのが「不妊治療(卵質改善、着床、流産予防)」「突発性難聴」「顔面神経麻痺」「小児はり」があります。
以前は、20代で産みあげる時代です。
不妊症はこれほど大きな社会問題ではありませんでしたし、体外受精という技術もありませんでした。
1978年体外受精ー胚移植をはじめ不妊治療は技術が大きく進化し、以前は子供を望むことができなかった方も妊娠・出産できる時代となりました。
一方で高度生殖医療も技術的には限界に近づいていると考えられ、妊娠率の上昇は一定のところで止まっております。そこで、鍼灸治療で新しい課題「卵子の栄養状態の改善(育卵)」「子宮内膜への働きかけ」「免疫寛容」「流産予防」などに鍼灸治療を応用することで、妊娠率の向上を目指し、高度生殖医療の補助医療として鍼灸治療を行っております。
鍼灸だけではなく、超音波診断装置(エコー)での逆子の確認を行った上で治療を行うことも当院で大切にしていることです。早い週数(妊娠週数28週頃)で逆子とわかり鍼灸院へ来院される方の約20%は鍼灸院に来院した時点ではすでに逆子ではありません。
エコーがない時代には、逆子という前提で、治療を行うしか方法はなかったのですが、現代では確認できる(診断は各産科の先生にご確認をいただきます)時代となりました。
「患者さんのための鍼灸院」
「突発性難聴」も同様です。難聴のレベルは評価が難しいため、必ず病院での聴力検査をお願いしています。また、当院でも確認ができるようにオージオメーターを完備し、治療を行っております。
耳鳴りの治療に対しては、鍼治療の効果は直後から変化するため有効性は実感していますが、聴力の回復を目的に鍼治療だけでは内耳の循環改善はスーパーライザーと比較するとスーパーライザーに軍配が上がるでしょう。
鍼灸だけにおだわっていたのでは、この難聴の方々を治療することは難しかったと思います。
私たちは鍼灸にこだわりは当然持っています。
その上でさらに鍼灸院にこだわりをもつ。
鍼灸師という私たち自身にこだわりをもつ。
この挑戦は生涯完成することはないと思います。
常に新しい課題を持つ患者さんと向き合いながら、ここにしかない鍼灸院。
ONLY ONEの鍼灸院を追及し続けたいと思います。
そんな思いを込めて当院の理念“BEYOND”(範囲や限界といったものを超える)として患者さんのためにを胸に歩み続けます。