鍼灸という仕事について
鍼灸という仕事について
鍼灸師の仕事をもし来世で生まれ変わってもやりたいなぁと思うほど魅力的だと感じて生きています。
その理由は、私の場合は「自由度」と「責任」このバランスが自分に合っている。
患者さんを
「問診」する
「身体診察」する
「治療」する
シンプルにしたら、私たちのお仕事はここに集約されます。
でも、「問診」 どんな位置で患者さんとお話しをするのか。
「鍼灸師」「患者」という関係性を築きたいのか。
「患者さんが抱えている問題」を一緒に解決する協力する仲間という関係を築きたいのか。
私たちは、ベッドの横でお話しをお伺いする際に、ベッドの場所やスペースにもよりますが、「C」や「D」を選択する。デザインするようにしています。
車に乗る時の運転席、助手席の位置関係、Barのような座る位置。
「A」「B」は面接や会議などで多いスタイル。なんか緊張感がありますよね。
私たちは、患者さんと「一緒に問題を解決する仲間」ということを意識しているので、「C」「D」を意識しています。
スティーブ・ジョブズは、何か決定する時に、横並びになって一緒に歩き、議題を話し決定するということを行なっていたようです。
会社の目標に向かって決断するという時にも、意見が違ってもそれは対立ではなく同じ共通目標に向かって歩んでいる。
そんな姿勢だけではなく、立ち位置、座り位置からもデザインをする。
こんなことを考えるのも、問診前の自由度の一つです。
問診について
「問診」についても私たちの言葉一つで展開は大きく変わってきます。
大切にしていることとして、「事実」と「患者さんがどう考えている」という仮説モデル、「患者さんが持っている感情」を意識して問診をするということです。
「事実」というのは、患者さんが何に困っている。いつから、どんなきっかけ、原因で困っている。
「患者さんがどう考えている」は原因からスタートして、現在の症状や起きている現象は、こんな関係性の中で困り事が起きているんだ。と患者さんが考えているモデル。
「患者さんが持っている感情」は、その症状によって私は悲しいとか、辛い、怒りを覚えるなどなど。
患者さんの中で起きていること、言葉にしていただいたことを整理しながら、鍼灸ができること、鍼灸師ができること。他の医療でどこに協力してもらったら良いのか。
そんなことを意識しながら患者さんと向き合います。
でも大切にしているのは、対話です。
私も正しい、患者さんも正しい。
その前提の上で、良い未来を探していく。
この時、安心してお話しいただける空気感を私たちは作れているのか。
来院前に不安はないか。
来院してから待合室で緊張していないか。
患者さんが話したいことを話せているか。
この問診には十分な時間をとり、患者さんのことを知りたいし、私たちがどんなことを考えているかも知っていただきたい。
全てを理解することは難しいけれど、相互理解をしながら一緒に歩みたい。
そんなことを問診では意識しています。
治療について
私たち田中はり灸療院は、鍼灸しかしません。
スーパーライザーなど治療器は使いますが、マッサージはしません。
「鍼」「灸」を使う専門家であり、鍼灸専門の治療院です。
そんなことを76年もやり続けてきました。
鍼、灸も私たちの基本姿勢は患者さんと一緒に作る。
例え必要な治療であったとしても患者さんの意向も確認する。
これはどういうことか。
鍼には、太さ、長さが道具として異なります。
0.02mmしか直径は変わらないにもかかわらず体の反応は変わります。
その違いを大切にしながら刺激を調整するわけですが、
身体を無地のキャンパスとして、
HBの鉛筆で線を書く。
そこに何往復も繰り返し線をなぞる。
2B 4Bに持ち替えて線を書く。
それぞれ異なった線の太さの線がキャンパスには描かれるが、
鍼でもこの違いが刺激量の違いになります。
また、鍼が初めてで怖いという方、鍼を受け慣れていて刺激(ひびき)がある鍼灸が好きな方
そんな方には、必要な刺激量を意識しつつ、どんな質で届けるか。
甘口のカレーが好きな方、辛口が好きな方、激辛が好き。
鍼も無痛を意識したり、優しい刺激にしたり、しっかりとした刺激にしたり色んなバリエーションを持っています。
表現方法も患者さんと一緒に作り上げる「自由度」と「責任」
「問診」する
「身体診察」する
「治療」する
短い文章の中で、書いてみましたが、書ききれないほど奥が深いです。
私たちは、「鍼灸」を追求しているわけではありません。
患者さんのための「鍼灸」とは何か。
「鍼灸院」とは何か。
そんなことを日々考えています。
ですので、76年経過してもいまだに未完成ですし、来世もこの世界でもいい。
でも、昨日より今日が良い鍼灸で、鍼灸院で患者さんに喜んでもらえるように研鑽しています。