ヨガでFSHが下がる?

ヨガでFSHが下がる?

 

なぜヨガを行うのか?

ヨガとは本来「つなぐ」「結びつける」という意味があり、ヨガ自体は「身体と心の科学」として考えることができます。ヨガでは身体と心を健やかに保つために八段階(ヨガの八支則)が存在します。

ヤマ Yama (禁戒) 他人や物に対して守るべき5つの行動パターン
ニヤマ Niyama (勧戒) 自分に対して守るべき5つの行動パターン
アーサナ Asana (坐法) ポーズを練習する
プラーナーヤーマ Pranayama (調気) 呼吸をコントロールする
プラティーヤハーラ Pratyahara (制感) 感覚をコントロールする
ダーラナー Dharana (疑念) 集中、感覚を閉じ込めて周りのものが気にならなくなる
ディアーナー Dhyana (無心) 瞑想、落ち着きのある静かな精神状態
サマーディー Samadhi (三昧) 悟り、心の平静を保つ精神的喜び

最近ヨガはストレス性疾患・愁訴に対して有効であるという研究報告が散見されるようになり、徐々にその機序も明らかになってきました。実際に医学論文に出てくるヨガは八段階の中でもポーズ(アーサナ)、呼吸法(プラーナーヤマー)、瞑想(ディアーナー)を含んだプログラムを指すことが多い。

ヨガは、運動であり、呼吸法であり、瞑想でもあるので動作と呼吸を一致させて行い、その中で生じる内容受(内受容覚ともいう)に意識を向けることにより、交感神経優位の状態から副交感神経優位の状態に導くことを医学的な効用として期待されています。

 

ヨガはどのような効果が期待されているのか?

ヨガはポーズ、呼吸、瞑想などを用いて身体的効果のみならず心理的効果をもたらすとされており、不安や抑うつの低減、疲労の改善、睡眠の改善が報告されている。その機序としては、ストレス状態では交感神経・副腎髄質系と視床下部ー下垂体ー副腎皮質系の活動が更新する一方で、心臓迷走神経活動は抑制され、心拍変動が低下した状態となります。またストレスが慢性化すると、全身性に慢性炎症を生じ、健康状態が悪化し、ストレスフルな外部環境に適応するために多大なエネルギーを要し、生体は疲弊、消耗します。

一方でヨガによって抑制性神経伝達物質であるγーアミノ酪酸(GABA)の脳内レベルや血中オキシトシン濃度が上昇し、交感神経活動と血中・唾液中コルチゾールは低下し、心拍変動増加します。さらにCRPやILー6などの炎症マーカーの値も低下し、身体的ストレスを抑制することで生活の質を向上させることができます。

Aストレス状態/ストレス性疾患 Bヨガによって生じる変化
不安、抑うつ

陰性感情

疲労感

覚醒レベル亢進

破局的思考

GABA↓ GABA↑

オキシトシン↑

不安、抑うつ↓

陰性感情↓

疲労感↓

睡眠改善

破局的思考↓

交感神経活動↑

迷走神経活動↓

心拍変動↓

コルチゾール↑

↕︎ 交感神経活動↓

迷走神経活動↑

心拍変動↑

コルチゾール↓

慢性低レベル炎症

疼痛、それによる

機能・生活障害

慢性低レベル炎症↓

疼痛、それによる

機能・生活障害↓

 

 

そして不妊治療においては、治療を受ける方は結果いかんに関わらず精神的ストレスを受けていることが多いです。実際に精神的ストレスはIVF(体外受精)の成績を悪化させる報告や、カウンセリングを用いたストレス回避によりIVFの成績が向上したという報告がります。ヨガの介入により不妊治療に対する精神的ストレスを解消させられる可能性があります。実際、ヨガにより、IVF中の方を含めて、不妊治療中のストレスを低減させる効果があることが報告されています。一方で、ヨガによる卵巣機能の改善、妊娠率の向上などの生物学的効果を示した報告はなく、不妊治療中のヨガはストレスマネジメントに有効であると言われています。

またFSH、LHを低下させる作用があるため、卵巣機能が低下してきている方にはFHSを低下させる目的でヨガを行う価値があると言われています。