悪阻は、妊娠による体内の変化、特にナトリウム不足による浸透圧の低下や、塩素不足によるでんぷん消化の困難さ、アンモニアに対する感受性の高まりなどが関与して悪化すると考えられています。このような状態を考慮した食事の工夫が推奨されています。
悪阻のときに試す価値のある工夫をご紹介します
1.電解質を含むもの
つわり中には「水を飲むのも気持ち悪い」と言う状態を経験することがあります。口にする飲み物は真水は避けることが良いでしょう
真水は血清浸透圧をさらに低下させ、悪阻を悪化させる可能性があるためです。
電解質を含んだものとして、スポーツドリンク、経口補水液、フルーツジュースなどが挙げられており、これらを飲むことで症状が改善することがあるとされています。
フルーツジュースに含まれる果糖やブドウ糖は単糖類であり、消化の必要がないため、体が取り込みやすいと考えられます。
2.果物
悪阻のひどい妊婦さんの中には、果物しか食べられないという方がいます。
果物には果糖、ブドウ糖、ショ糖が含まれていますが、特に果糖とブドウ糖は消化する必要がない単糖類であるため、塩素が不足しがちな妊娠中でも食べやすいとされています。
また、果物はアンモニア含有量が少ないことも、食べやすい理由の一つと考えられています。
3.
塩飴
◦
悪阻を自覚している妊婦さんに飴と塩飴を比較してもらう実験では、重い悪阻の方ほど塩飴の方が食べやすく感じられる傾向がありました。
◦
これは、塩飴に含まれる塩素が、でんぷん分解酵素であるα-アミラーゼの活性を保つのに役立ち、糖類の消化吸収を助けるためと考えられています。唾液や膵液で分泌されるα-アミラーゼは塩素によってはたらきが保たれますが、妊娠中のナトリウム不足があると塩素の再吸収がうまく行われず、α-アミラーゼが十分に作用できなくなることがあります。
4.ジャガイモ(特に塩がかかったもの)
ジャガイモはアンモニア含有量が少ない食品であり、塩がかかったフライドポテトが悪阻の妊婦さんに人気のある理由と考えられています。
5.冷たい炭酸飲料(少量)
コーラを好んで飲む妊婦さんが多いとされています。コーラはブドウ糖を含むため吸収しやすく、冷えた炭酸が含まれていることで腸の蠕動運動を促進し、腸に溜まったガスが移動して悪阻が軽減される可能性があると考えられています。
少量の冷たい炭酸水(150ml以下)も、同様に腸を刺激して蠕動運動を活発にし、悪阻症状を軽減する効果が期待できます。
6.すっぱいもの
妊娠中は梅干しやレモンなど、すっぱいものを好む妊婦さんが多いと言われます。
これは、すっぱいもの(クエン酸など)がアルカリ性のアンモニアを中和する働きがあるためと考えられます。
ご飯など多くの食品に微量に含まれるアンモニアの臭いを軽減することで、食事がしやすくなる可能性があります。
7.マグネシウムを多く含む食品
マグネシウムは悪阻の予防に非常に重要なミネラルであると考えられています。マグネシウムが不足すると、悪心や嘔吐が増幅される可能性が示唆されています。
マグネシウムは種実類やバナナ、海藻類などに多く含まれています。
苦手なものがある場合は、バナナだけでも食べてみるのも良いとされています。
でんぷんのみの摂取は避ける。
ご飯の炊けるにおいやトーストしたパンはアンモニアが気化しやすく、不快に感じやすい場合がある。すっぱいものと一緒に食べるなどの工夫が有効な場合があります。