妊娠期のトラブルに関する基礎知識

妊娠期のトラブルに関する基礎知識

令和3年12月5日(日)に兵庫県鍼灸師会さん主催の学術講習会へ参加しました。

このページは、一般の方向けという内容よりは、周産期に関わる医療者向けの内容になっています。
私たちが妊婦さんと出産に向けて関わる中で、どこまでは私たちが治療が可能なのか。
どこまでがというのは、治療をして治すということが言いたい訳ではなく。
逆子やお腹が大きくなるにつれた各所が痛む。
その中で、安全に関わることができる青信号の状態。
どこかで黄色信号が灯った際に、気が付けるように。
赤信号の時点では救急車を呼ぶ必要もあるなど、対応が変わってきます。
知識を深めることで、よりその変化に気が付くことができるようにという意識で学んでいます。

私たち鍼灸師に必要なことは診断をすることではありません。
「空振りを恐れずに、きちんと医療機関と連携し母子ともより安全に治療を行う」

さて、今回講師は、地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター産科副部長 金川武司先生

今回は、金川先生のご専門である産科領域という中で鍼灸師に知っておいて欲しい「妊娠期の基礎知識」という内容でご講義いただきました。

私たちの日常臨床の中で、「妊娠する」ために治療する不妊治療の領域と。
その後、「出産する」ために治療する主には逆子、また腰痛や鼠径部痛などを含めて出産に向けて治療を行っております。

鍼灸院に受診する方は、報道で聞くような妊娠をしているが病院に未受診の妊婦さんに出会ったことはありません。

そのため、病院で産科の先生のところで経過観察を受けながら、困っている症状に対して鍼灸治療ができています。

これは、産科の先生方の努力によるところが大きく、私たちもより丁寧に観察しながら治療に関わっていきたいというのがまず今回の講義を受けての率直な感想です。

金川先生のお話は大阪の和泉市に病院があることから「コウノトリ」のお話からはじまり自分たちにも馴染みのある話題で、
漫画も読んだしドラマも見ていました。

コウノトリにはモデルになった実在の先生がおられるため、金川先生はより近い距離でモデルの先生方と働かれているお話でした。

妊娠 基礎知識

「妊娠期間の定義」
・最終月経開始日から起算して数える
・分娩予定日は280日目、40週0日

「妊娠週数について」
「付属物」
・胎盤
・臍帯
「妊娠に伴う変化」
・妊娠時は正常と異常がオーバラップする点に注意が必要

知っておいてほしい
産科疾患

金川先生のご講演の中で強調してお話頂いた内容は

「早産」

ウテメリンが登場したのが1986年8月だか早産の頻度は減っていない
早産の大きな影響因子として多胎があり、体外受精によって多胎が増えて時期があり早産も増加している時期がある。
体外受精時に原則受精卵を一つ戻すようになったことで、多胎はピークより減少している。

→切迫早産とは、早産の可能性が高まっている状態
症状としてはお腹の張り(子宮収縮)腰痛、生理痛と訴えることも、性器出血、急激な帯下の増量、水様性の帯下(破水)

「妊娠高血圧症候群(HDP)」

「妊娠高血圧症候群」
妊娠中または産褥期に高血圧を認めたもの
収縮期血圧140mmHg以上 or  拡張期 90mmHg 以上を2回認めた場合
「妊娠高血圧」
「妊娠高血圧腎症」
妊娠20週以降に高血圧を発症
+下期のどれかひとつ
・蛋白尿
・母体の臓器障害
・子宮胎盤機能不全
「加重型妊娠高血圧腎症」
「高血圧合併妊娠」

妊産婦死亡の原因の直接的な病名ではないが妊娠高血圧症候群が全体の約10%に当たる。
年間4ー5名の方の死亡に関わる。

明治時代の分娩は死亡の原因に大きく関わる。
医療が発達したことでこの割合は大きく減っているが、
「女性」の命をかけた出産ということは知っておいて欲しい。
これは金川先生が特に強調されていました。

 

妊娠高血圧症候群の最も注意が必要なことは自覚症状なく進行し、時に急激に(数日で)これらの合併症がおこりうる。
重症化した場合には
・浮腫(上半身・眼瞼浮腫0
・頭痛
・心窩部痛(胃の痛み)
・右記録部痛
・眼華閃発

「常位胎盤早期剥離(早剥)」

「常位胎盤早期剥離(早剥)」
疫学的には諸外国の報告にもよるが約0 .5-1%の頻度で起こる。

「常位胎盤早期剥離(早剥)」のリスク
リスクの中で最も上位のリスクは早剥の既往がある。
「過去の妊娠で早剥を経験している」
ただし、「リスクがある」「リスクがない」を調べた時に、リスクがなく早剥を起こしている人が結構な割合でいる。

  1. 全ての妊婦に対し、30週頃までには早剥の初期症状(出血・腹痛など)に関する情報を提供する

引用文献:産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2020
「この産婦人科診療ガイドラインは無料で公開されているためぜひ参考にしてみてください。」(金山先生より)

早剥で特に金山先生が強調されていた点は、「その病気を患者さんが知っているかどうか」これを妊娠中に知っておく必要があること。その知識があるかどうかで、命を守るのに、時間的に間に合うのかどうかの線引きが生じてしまう。

ぜひ「早剥について知っておいてください」

外部リンク:金山先生の活動とNHKに取材を受けた際のブログ
https://www.nhk.or.jp/osaka-blog/fukabori/372444.html

このあたりの備えというのはどこまで知っていただくのか難しい点もありますが、課題だと感じました。

よくある症状

腰背部痛について
浮腫(むくみ)について

診療をする上で鍼灸の臨床の中でも、妊娠期において「腰背部痛」「浮腫」で来院される方がいます。その中で、鍼灸師が治療をして良い症状なのかを判断する上で参考にするのがRed flags (警戒徴候)。

Red flagsはいわゆる赤信号が灯っている状態を指し、「速やかな対処が必要な疾患を示唆する状態」
これを病歴上のRed flags 身体所見上のRed flagsに分けて考えるということを教わりました。
妊娠期においては胎動減少、性器出血、周期的な痛みなどが病歴上のRed flagsに該当し、発熱、血圧、頻脈などが身体所見上のRed flagsとなる。

妊娠期の浮腫については
「妊娠高血圧症候群」については上半身の浮腫、眼瞼浮腫が特徴的で、上半身の浮腫に関しては、「脇が閉めにくくなっていませんか?」という問いを行うことで、腋窩部の浮腫の存在を確認する。

また全身性の浮腫の場合には心不全を含めて全身に影響を与える疾患を想起し、
片側下肢(左側)に起きている際には深部静脈血栓症を想起する。
(文責:遠藤彰宏)

関連WEB

妊活の鍼灸

(https://tanaka-harikyu.jp/fertility-treatment/)

逆子

(https://tanaka-harikyu.jp/sakago/