男性不妊
<精子力>と<鍼灸治療>

はじめまして。田中はり灸療院の遠藤彰宏です。

このWEBにたどり着くまでに、皆さんは色々な現実と向き合いながら多くの情報を検索し、
ご自身、ご夫婦の現状から、新しい未来を描くか様々な不安と期待をお持ちだと思います。

現在、男性不妊の患者さんの来院は、鍼灸院も増加傾向ですし、2022年4月の保険診療の拡大の影響で生殖医療の分野でも男性不妊の患者さんの通院は増えていることが報告されています。

「男性からの相談」「通院中のパートナーからの相談」
男性不妊に関してかなり身近に話題に出てきます。

男性不妊で悩まれている方
妊活中でご主人の精子の状態に不安がある方
男性不妊の病院を訪ねるには抵抗があり
その前に、精子を観察したい方

生殖医学会のアンケートでどの病院でどんな治療を行なっているかの一覧があるのでぜひそちらも参考にして見てください。
参考)男性不妊症の診療に関するアンケート調査2023.7

男性不妊の患者さんに対して思うことは、適切な情報提供を行うこと。
良い精子を供給できるように治療・アドバイスを行うことに徹しております。

※無精子症でお悩みの方で、今後 精巣内精子採取術 (TESE:Testicular Sperm Extraction)を検討されている方 について、鍼灸治療が効果的であるという研究については、まだ私自身は知りません。
※TESEを検討されているご夫婦よりご相談をいただくことがありますが、私たちに何ができるのか、現段階で答えを見つけることはもちろん、期待に添えるようなものも見出せずにいます。

鍼灸が介入して意味を持つとする、期待値はどこにあるか?を現在の段階で感じていることは、精巣内にすでに精子がいるのであれば血流を上げる意味はあるのではないか。

一方で、一度TESEを行い精子を発見することができなかった場合に鍼灸治療を行う意味があるのか?については仮に2回目のTESEで精子が発見できたとした場合でもそれは鍼灸治療によって精子を産生を促したということは考えにくく、1度目のTESEでは精子は発見できなかったが、2度目で発見することができた(1度目は見逃し)と考え、鍼灸は存在している精子に対して血流増加による精子の質つまり良い精子を期待したい。

TESEと鍼灸治療に関しては現段階ではそのように考えています。

男性不妊の鍼灸治療に
期待できること

「造精機能の改善」
 鍼灸治療は、男性不妊、特に造精機能の改善に対して一定の効果を上げている
伝統的なツボや経絡の概念だけでなく、解剖学や生理学に基づいた現代医学的な視点から鍼灸治療のポイントを決定。これは、神経の支配や受容器の分布を考慮し、針の刺入深度や刺激方法を調整することで、より効果的な治療を目指しています。
「勃起機能への影響」
 鍼灸治療は、遠心路の働きを促し、神経機能を亢進させることで一酸化窒素の放出を促進する可能性があると示唆されています。PDE5阻害薬と併用することで、その効果を高める可能性も考えられています。
「仙骨部への刺激」
 仙骨部への鍼刺激が、精巣血流を改善する可能性が研究されています
精子の数の増加や、精子の運動率の向上は、精巣の血流改善が大切な要素の一つですが、その機能を高めるために仙骨部の刺激が造精機能の向上に繋がる可能性が推察されています。
「睡眠の質の改善
最近では生活習慣との研究も発表されており、その一つとして注目されているのが「睡眠です」不妊に悩む患者の中には睡眠障害を抱える方も多く、鍼灸治療による不眠の解消も期待されています。研究データでは、適切な睡眠時間(7-8時間)が精液所見の改善に重要であることが示されており 、鍼灸治療が睡眠の質を高めることで、間接的に精液所見の改善に貢献する可能性も考えられます。
「男性不妊に関する鍼灸治療の研究の現状」
男性不妊に対する鍼灸治療は、女性の不妊治療に比べて研究や検証がまだ十分ではないのが現状です。
これらを踏まえた上で、男性不妊についてもう一度考え、何ができるかを一緒に考え治療をするためにこのWEBを作成しました。鍼灸治療を必要としている人には鍼灸治療で貢献がしたいし。
鍼灸を必要としない人には必要な情報が届くことでお役に立てたら嬉しいです。情報はご自身の状況、心境によって印象も必要だと思うところも変化します。
わかりにくいところは何度も読んでいただき俯瞰してみたりしながら視点を変えてみてください。

男性不妊の現状

皆さんご存じのように、現在、日本は少子化が大きな問題となっています。その一つの要因として不妊カップルの増加がいわれています。

その数として、5.5組に1組が不妊検査や治療の経験を有してるとの報告があります。

これまで不妊の原因の多くは女性にあるのではないかと考えられてきましたが、実は約半数は男性にその原因があることが明らかとなっています。

WHO(世界保健機関)の定める
男性不妊の基準
2021改訂版

WHO(世界保健機関)の男性不妊の基準は、2021年に11年ぶりに改訂された第6版の精子検査マニュアルで変化がありました
以前の基準(第5版、2010年)からの主な変更点は以下の通りです。
「精液量1.5 mL以上から1.4 mL以上にわずかに減少」
「精子濃度1500万/mL以上から1600万/mL以上に増加」
「総精子数については、第6版には明確な記載なし(第5版では3900万以上)」
「運動率40%以上から42%以上に増加」
特に、変わった点の一つとしては、「前進運動率については、第5版では32%以上でしたが、第6版では30%以上となりました。」
※以前までは、これまでの基準が少し曖昧さを持っていたため、わずかでも動いている精子を運動精子として数える施設もあったようですが、前進している精子の割合がより重視されるという「前進運動精子」の定義も変化があり精子の前進運動に対する基準が厳しくなったため割合は2%下げても基準値として指標になる考えています。
「生存率については、第6版には明確な記載なし」(第5版では58%以上でした)
「正常形態率4%以上で変更なし」
しかし、形態評価の重要性は依然として高く、より厳密な評価が求められるようになっています
さらに、今回の改訂では、従来の量や運動性といった項目に加えて、精子の質に関するより詳細な検査項目が新たに加わりました。
「精子DNA断片化検査」
「精子酸化ストレス検査」

「精子形態異常の詳細な検査」

 

これらの新しい項目が追加されたことにより、精子の状態をより多角的に評価することが可能になりました
以前の版においても、透明帯結合試験、活性酸素種(ROS)検査、生存精子確認検査(HOSテスト)、精巣や精巣上体からの精子採取方法、ラボの品質管理などが記載されていましたが、最新版ではさらに詳細な評価が盛り込まれています
これらの変更は、自然妊娠が成立する可能性の目安となる基準値をより現実に近いものにするとともに、高度生殖医療の現場でより詳細な精子の評価を行うための指針を示すものと言えるでしょう。
しかし、これらの基準値を超えていても、自然妊娠のためにはより高い精液所見が望ましいという意見も専門家からは出ています。
その根拠になっているのは、各臨床家の先生方の日常臨床での自然妊娠症例と精子所見の感覚値と岩村輝明先生らの「Semen quality of fertile Japanese men: a cross-sectional population-based study of 792 men」で発表されています。

この研究では、妊娠8〜12週の女性の夫を対象に精液所見が調査され、対象は不妊治療を受けていないカップルで、男性不妊疾患を持つ患者は除外されています。
以下が自然妊娠可能な精液所見の中央値です。

  • 精液量: 3.0ml

  • 精子濃度: 84,000,000/ml

  • 運動率: 77%

  • 正常形態率: 9.3%。

このデータは、妊娠可能な精液所見の参考値としてとても重要だと言えます。

そのためWHOの基準は自然妊娠を目指す上での最低ラインとする捉え方や、さらに精子所見を良くしていくことは鍼灸師としても検討いただきたいです。

原因に対する治療か
原因ではなく必要な手段か

男性不妊の分野はICSI(1992,Palermo),TESE-ICSI(1993)などの生殖補助医療技術が急速に普及したことにより、「男性不妊の原因を解明して、その原因に対する治療を行う」ことよりも、いかに「妊娠・出産をするか」を目的としての手術が発達してきた分野という特徴をもっています。

例えば、TESEを行う場合には睾丸から精子を見つけ出し、ICSIによって受精、着床、妊娠を狙っていきます。

例えば射精精液中に精子がいない場合に精路通過障害に対して再建手術を行うのか。精子が通過できないという問題への対処するのか。
射精精液中に精子がいないなら、TESEを行う。

原因に対する治療ではなく、起きている問題を解決する手段として、TESEやICSIのかが生殖医療の先生方の治療介入が異なります。

一方で、全体の男性不妊原因の中で、造成機能障害が 82.4%  その内特発性が 51.0% 精巣静脈溜は36.6%と結構な割合が存在します。

精巣静脈瘤に関しては、Gradeによって治療法は異なるためより専門医を受診して良いと考えています。

この精巣静脈溜の手術は原因に対する治療だと言えます。

精巣静脈瘤には解剖学的に起きやすいという特徴があり、右の精巣静脈は直接下大静脈に注ぐ。これは、小さな川から直接大きな川へ流れていくように、接続部分では問題はおきにくい。
一方、左の精巣静脈は左の腎静脈につながるため、小さな川から小さな川に流れることで、簡単に合流地点で流れの停滞が起こってしまう。

流れが悪くなり静脈で瘤(こぶ)が起きると、そこで血液が停滞し、また精巣温度が高くなることで精子へ悪影響が起こっていると考えられています。

そのため、精巣静脈溜に対する手術は、その原因を取り除くことで精子の改善を狙っていく治療となります。

仮にICSI(顕微受精)を行うにしても精巣静脈瘤を手術することは精子の質という点では大切なことがあります。

「精子力」岡田弘

日常生活の注意点男性不妊のスペシャリスト泌尿器科医の岡田弘先生の著書 『男を維持する「精子力」』に掲載されている精子の運動をどうやって改善するかの7箇条です。

1.禁煙すべし!
2.禁欲するなかれ!
3.ぴっちりした下着は避けるべし!
4.サウナ、長風呂は控えるべし!
5.膝上でのPC操作に注意すべし!
6.自転車で股間を刺激するなられ!
7.育毛剤には気をつけるべし!

(岡田弘『男を維持する「精子力」ブックマン社』より引用)

その他にも、

飲酒は適量に
規則正しい生活
運転しすぎない
携帯電話は精巣から離す
太りすぎない
心理的なストレスを軽減

など、精子に良い生活を送る為に必要な注意事項があります。
それぞれの中でどれか唯一の行動変化を期待できるものもあれば、トータルで考えなければいないものもあります。
思い当たるものは、是非、日常の生活で気をつけてください。

私自身の精子に起こった変化

私個人の話をさせていただきますと、顕微鏡を購入した2019年には、自分の精子はかなりの数と運動率がありました。
しかし、2019年はマラソンに挑戦を始めた年で、2019年10月-2020年1月の間に3回のフルマラソン、大会も含めて月200kmのトレーニングを積み重ねた結果、
2020年3月末に精子を観察した際に精子の数、精子の運動率ともに悪化していることがわかりました。

ランニングが趣味の方は、月200km以上のランニングはお控えください。

3月に計測した精子所見が悪い理由としては、「精子は 約74日かけて造られる」ことがあります。

そのため、何か精子に対して悪化する要因あれば、その影響は約2か月半後に出る。

私の例では、年末年始頃、もしくはそれ以前からのマラソンの高負荷の影響によって、造精機能に影響が出たと考えられます。

皆さんが日常生活に気をつけて精子の改善を狙っていく際にも、鍼灸治療を行った場合にも、その結果は74日以降に影響が出るということを知っておいてください。

生活習慣を見直し、健康な体を取り戻し、精子力を鍛えましょう。

岡田弘先生の本は、一般の方向けに書かれている本で読みやすいので、ぜひご夫婦で一度読まれてみてください。不妊の原因割合男性24%

男性不妊の原因となりうる疾患

男性不妊の原因

造精機能障害(82.4%)
(精子をつくることができていない状態)
射精機能障害(13.5%)
(膣内へ射精ができない状態)
閉塞性精路障害(3.9%)
(精巣から尿道までのルート(精路)を精子が通過できない状態)

造精機能障害

精液中に精子が存在しない特発性(原因不明)(42.1%)
精巣静脈瘤  (30.2%)
染色体異常 (4.4%)
停留精巣手術後(1.4%),
未治療(0.2%)
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
先天性(0.6%),後天性  (0.4%)
流行性耳下腺炎による精巣炎

射精機能障害

逆行性射精・膣内射精不能(7.4%)
勃起障害(6.1%)
精巣上体炎後(0.7%)

閉塞性精路障害

先天性精管欠損(0.5%)
鼠径ヘルニア手術後(0.7%)
射精管閉塞(0.07%)

(『我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究 湯村寧ほか』より引用)

この中で、閉塞性精路障害については鍼灸適応外です。
閉塞性精路障害の場合には、専門の泌尿器科の先生の手術が必要となるため、専門医の先生にご相談ください。

この中で特に注目したいのが造精機能障害の原因不明42.1%です。他の論文では60-80%と原因不明の割合はかなり多い。

 

また、治療方法も確立されていないのが現状です。

精子について

基準値精液量(ml) 1.5ml
精子濃度 1ml中に1500万以上
総精子数 3900万以上
総運動率 32%
(前進運動率)
40%以上
(前進運動率+非前進運動精子)
生存率 58%
正常形態率 4%

『精液所見基準値(WHO第5版)』

WHOの精液所見基準値についてですが、これは精液所見の正常値を表しているのではありません。「基準値」です。
この「基準値」とは、通常の性交で自然妊娠するための最低限度を「WHOの精液所見の基準値」です。
この数値を下回ると、この検査結果が出ている瞬間の精子では自然妊娠は難しい。

自然妊娠に必要な精子濃度、精子運動性

精子濃度(百万/ml)

試験総数 84(76-92)
札幌 89(76-104)
大阪 80(70-93)
金沢 80(70-92)
福岡 98(80-120)

※数字は調整後中央値(95%信頼区間)

自然妊娠が確認された男性の精液所見4都市で測定した日本人男性792名の基準値。
日本人の場合は、精子濃度は8,400万/mlが、自然妊娠としては欲しい数字です。

精子運動性(%)

試験総数 77(74-79)
札幌 66(61-70)
大阪 94(93-95)
金沢 60(48-56)
福岡 69(62-74)

運動率では、77%という数字が出ています。
(Iwamoto T,Nozawa S,Yoshike M,et al:Semen quality of fertile Japanese men: a cross-sectional population-based sudy of 792 men.BMJ Open.2013:3:pil: e002223より引用)

この二つの票を比較すると、WHOの基準値は低く設定されていることがわかります。
そのため、自然妊娠を目指しているがなかなか妊娠することができない。
WHOの基準値は超えているため問題がないと考えている場合、自然妊娠を目指すのであれば、もう少し基準値を高くすることを検討しなければいけません。

一方で、精液所見はばらつきが大きいため、『「基準値を下回っている=自然妊娠が望めない」というわけではない。』
下のグラフをみてください。

お一人の精子の濃度の追跡調査
(出典:WHO 精液ラボマニュアル 1992年)

この精液所見は、お一人の方の精子を毎週採取し、120週精子の濃度を調査したグラフです。
精子は、このように変動が大きいことが知られているため、検査数値は一回で判断せずに、複数回の検査結果を考慮する必要があります。極端な例では、午前中と午後でも変動があることが知られています。
いつも午前中に精液検査があるという方は、一度、「午後に検査」という選択もあっていいと思います。男性の繊細な一面は、この辺りにも表れているようです。

 

年齢と総運動精子数の変化

男性の精子も年齢的な影響を受けることが最近わかってきました。

女性の「卵子」は年齢に比例して「質」が低下
男性の「精子」は精液検査所見の悪化に比例して「質」が低下

男性の場合には、精液所見を改善することが「精子の質の向上」につながります。

 

精子力と妊娠について

 

「ヨーロッパ4か国の妊娠女性の検討から、5500万/mLまでは精子濃度が上昇するほど自然妊娠に至るまでの期間が短くなる」(Slama R,et al,2002)

「総精子数と精子濃度が上昇するほど、自然妊娠に至るまでの期間が短くなる」(Zinaman MJ,et al,2000)

「精子運動率、直線運動速度、直進運動率が低下するほど、自然妊娠に至るまでの期間が長くなる」(Buck Louis GM,et al.2014)

「正常形態精子率が低くなると、IUIならびにIVFの成績が不良となる」(Van Waart J,et al,2001)(Check ML,et al,2002)

「IVF/ICSIにおいては、精子パラメーター(尺度)は妊娠率に影響を及ぼさない」(Palermo GD,et al,2017)

 

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「精液所見の改善」と「精子の質」

1)精子が造られる約75日間を狙って精子の質の向上を狙う
2)精液採取前日の鍼灸治療により精液所見を改善を狙う
3)射精障害 EDに対して鍼灸治療を行う

この中の1、2が鍼灸治療を行って「造精機能」つまり精液所見を改善し、精子の質の向上を狙っていく方法です。
男性不妊の方への鍼灸治療は、まだ研究がはじまったばかりで論文数も多くありません。
その中でも貴重な論文、学会発表がSR鍼灸烏丸伊佐治景悠先生の発表です。

造精機能の改善を目指した
鼠径部への鍼通電刺激による
精液所見の変化


成人男性(24名)を対象として、鍼治療が精液所見に及ぼす影響を検討したところ、精巣の血液循環と前立腺機能が向上することで、精子数の増加と精子運動率の上昇が認められた。
乏精子症と乏精子症・精子無力症の併発症例では、鍼治療により精液所見が正常値に改善された。
伊佐治景悠『鼠径部への鍼通電刺激による精液所見の改善効果- 精漿成分と精巣血流を指標とした検討 -』「日本アンドロロジー学会第37回学術大会」演者の許可を得て転載)

 

男性不妊に対する
3か月間の鍼治療の影響

精液量 総精子数
精液濃度 精子運動率

 

「この研究は、精液所見が世界保健機構(WHO)の基準値を下回っている方(乏精子症,乏精子症・精子無力症の併発症例)を対象として、週1回の頻度で3か月間(合計12回)鍼治療を行った結果、造精機能に関するすべての所見(精液量、総精子数、精子濃度、精子運動率)がWHOの基準値以上に改善した。」という鍼灸治療が精子所見に効果があったという報告です。
(
伊佐治景悠『勃起障害と精液所見改善への鍼灸治療-現代医学的アプローチからー』医道の日本2019.Vol.78.No.5:47-52)

 

鍼治療精液所見への影響

精子運動率

健常な成人男性 (被験者)32人に、精液採取の前日に中髎骨膜刺激(仙骨に接する深さまで鍼を刺入して刺激)を行い、刺激前後で精液所見を比較して所、精子の運動率が優位に上昇した。
(伊佐治景悠『勃起障害と精液所見改善への鍼灸治療-現代医学的アプローチからー』医道の日本2019.Vol.78.No.5:47-52)

この際の対象群は同じく中髎穴から鍼を行うが、骨膜まで鍼を到達せずに筋肉内の刺激に留めたところ、精子運動率に改善を認めなかった。
2群とも射精→鍼→射精という順序は同様だが、間の鍼の刺激方法が異なることで結果が変わる、という報告です。

造精機能は約75日必要なことを考えると、精子に直接影響を与えているのではなく精子の運動をサポートする因子として、副性器から分泌される精漿が影響を与えていると考えられる。
その中でも、前立腺から分泌される前立腺特異抗原が「精液を液状化させること」で「精子が動きやすい環境を整えている。」

 

鍼灸治療の治療
間隔とタイミング

このように上記の伊佐治先生の二つの研究を中心に、

精子を造精するために約75日間1週間に一度のペースで鍼治療を行うこと
精液採取前日に鍼治療を行う(体外受精,人工授精)

この2つの治療のタイミングが当院でも標準にしている治療間隔に設定している。

初診料

 年齢  初診料
 一般  2,200円
学生  1,100円

 

治療費

診療項目 治療費
一般治療 7,700円
不妊治療 7,700円
逆子治療 3,850円
学生 3,300円

※価格はすべて税抜き価格です
※日曜日と祝日は休診です。また講習会や学会参加等で不定期で休診になることがございます。
※土曜日は、別途+1,100円頂戴いたします。
※スーパーライザー照射料は上記治療費に含まれております。

【支払い方法】
現金

クレジットカード


セルフケア

パイオネックス 金額
100枚 2,750円
 40枚 1,100円
 20枚  550円
せんねん灸(180入) 1,650円

FAQ

Q1: 男性不妊の原因としてどのようなものが挙げられますか?

A1: 男性不妊の原因は多岐にわたります。大きく分けると、精子を作る機能に問題がある「造精機能障害」、精子の通り道に問題がある「精路通過障害」、そして性行為に問題がある「性機能障害」、副性器の機能異常が挙げられます。特に造精機能障害が最も多く、精子の数、運動率、正常形態率の低下などが含まれます。具体的な原因としては、精索静脈瘤(精巣の静脈の逆流)、停留精巣(精巣が体内に留まったまま降りてこない)、内分泌障害、染色体異常(例: クラインフェルター症候群、Y染色体上のAZF領域欠失)、薬剤の影響(例: 男性ホルモン作用のある育毛剤、抗潰瘍薬、ステロイド剤、抗がん剤など)、感染症、陰嚢の温度上昇(長時間の座り仕事、特定の下着、サウナなど)などが知られています。また、ストレスや心理的プレッシャー、喫煙も精子の質に悪影響を及ぼします。

Q2: 精子の質を高めるために日常生活で気をつけるべきことは何ですか?

A2: 精子の質を高めるためには、日常生活でいくつかの点に注意が必要です。

  1. 熱からの保護: 精子は熱に弱いため、陰嚢を涼しく保つことが重要です。長時間の入浴やサウナは避け、トランクスなど通気性の良い下着を選ぶ、膝上でのノートパソコン使用を控える、長時間の自転車・バイク乗車を避けるなどが推奨されます。
  2. 禁欲期間の調整: 長期間の禁欲は精子のDNA断片化率を上げ、運動率を低下させる可能性があるため、2~3日に1回の射精が推奨されます。ただし、精液検査や人工授精の前など、目的によっては2日程度の禁欲期間が望ましい場合があります。
  3. 食事とサプリメント: 抗酸化物質(ビタミンC、E、還元型コエンザイムQ10、PQQなど)を意識的に摂取することが重要です。野菜や青魚(オメガ3脂肪酸、EPA、DHAを含む)などを積極的に摂るのが良いでしょう。肉の摂りすぎは、精子の材料となる葉酸の取り込みを減らす可能性が指摘されています。
  4. 禁煙: 喫煙は精子の質を著しく低下させ、流産や早産のリスクも高めるため、不妊治療中は避けるべきです。
  5. 薬剤の注意: 一部の育毛剤(男性ホルモンに作用するもの)、抗潰瘍薬、ステロイド剤、抗がん剤などが精子形成に影響を与える可能性があるため、服用中の薬については医師に相談することが重要です。
  6. 睡眠と肥満: 十分な睡眠(7〜8時間程度が最適)を確保し、適度な運動による肥満解消も精巣の温度上昇を防ぐ上で有効です。

Q3: 男性不妊の検査は具体的にどのようなものがありますか?

A3: 男性不妊の検査は多岐にわたります。

  1. 精液検査: 最も基本的な検査で、精液量、精子濃度、総精子数、運動率、前進運動率、精子生存率、正常形態率などを評価します。WHOの最新基準値(2021年改訂)に基づき評価されますが、自然妊娠を目指す場合はWHO基準値よりもさらに高い数値が理想的とされています。
  2. 精子DNA断片化検査: 精子のDNA損傷の程度を評価する検査で、体外受精や不育症、流産のリスクとの関連が注目されています。日本でも検査可能です。
  3. 染色体・遺伝子検査: クラインフェルター症候群やY染色体上のAZF領域欠失など、遺伝的要因を特定するために行われます。AZF領域のAまたはB欠失がある場合、精子形成はほぼ不可能とされます。
  4. ホルモン検査: 精子形成に関わるホルモン(FSH、LH、テストステロンなど)のレベルを測定し、内分泌系の異常を特定します。
  5. 精巣生検・マッピング: 精巣内の精子形成の状況を確認するための検査です。従来のマイクロTESE(精巣内精子採取術)に加えて、近年ではFAマッピング(FNA mapping: Fine Needle Aspiration Mapping)という、精巣を切開せずに細い針で複数箇所から精子や精子前駆細胞の存在を確認する方法が注目されています。これにより、手術の侵襲を減らし、精子回収の可能性が高い場合にのみTESEを行うことが可能になります。
  6. 精液の酸化ストレス検査: 精子に対する酸化ストレスの影響を評価します。

Q4: 男性不妊の治療にはどのようなアプローチがありますか?

A4: 男性不妊の治療は、その原因に応じて多岐にわたります。

  1. 生活習慣の改善: 精子の質を高めるための生活習慣の見直し(Q2参照)。
  2. 薬物療法: ホルモン補充療法、抗酸化作用のあるサプリメント(ビタミン類、コエンザイムQ10、PQQなど)の服用などが挙げられます。炎症や感染が原因の場合は抗菌薬が用いられることもあります。
  3. 手術療法: 精索静脈瘤の治療、精路通過障害に対する精路再建術、閉塞性無精子症に対する精巣内精子採取術(TESE)などがあります。特にTESEは、精子が見つからなかった場合に後遺症として男性ホルモン低下のリスクがあるため、FAマッピングなどで事前に精子の存在を確認してから行われることがあります。
  4. 生殖補助医療(ART): 人工授精(AIH)、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)などがあり、重度の乏精子症や精子無力症、精路通過障害、性機能障害などで精子が得られない場合に適用されます。特にICSIは、わずかな精子でも受精が可能となるため、男性不妊治療の主流となっています。
  5. 鍼灸治療: 精神的ストレスの緩和だけでなく、精液所見(精子運動率、正常形態率、総精子数など)の改善が報告されており、補助的な治療として活用されています。週2回、8週間程度の治療期間が目安で、関元、三陰交、太渓、帰来、腎兪などの経穴が頻繁に用いられます。仙骨部や鼠径部の刺激により、血流改善や自律神経系への作用が示唆されています。
  6. 性機能障害への対応: 勃起障害(ED)や射精障害に対しては、PDE5阻害剤(バイアグラなど)の内服やカウンセリング、性行為のプレッシャー軽減のためのタイミング法の見直し(毎日ではなく2日に1回にするなど)などが検討されます。

Q5: 鍼灸治療は男性不妊にどのように作用すると考えられていますか?

A5: 鍼灸治療は男性不妊に対して複数のメカニズムで作用すると考えられています。

  1. 精液所見の改善: 鍼灸治療により精子の運動率、正常形態率、総精子数などの改善が報告されています。これは、鍼刺激による局所の血流改善や、精子形成を促進するホルモンへの影響などが示唆されています。特に陰嚢温度の低下や精巣血流の増加が報告されています。
  2. 気血の滞りの改善: 東洋医学的な観点からは、気や血の滞りを改善することで、生殖機能全体のバランスを整えると考えられています。
  3. ストレス緩和: 不妊治療に伴う精神的ストレスの緩和も重要な効果の一つです。ストレスは性機能障害の一因となるだけでなく、全身の生殖機能にも影響を与えうるため、鍼灸によるリラックス効果は間接的に不妊治療に貢献します。
  4. 経穴の特定の効果: 報告されている文献では、関元穴、三陰交穴、太渓穴、帰来穴、腎兪穴などが頻繁に使用されており、これらの経穴が精、気、血を補う作用や、精巣動脈の血流増加に有効である可能性が指摘されています。特に帰来穴への10Hzの鍼通電が精巣動脈血流増加に有効である可能性が示されています。
  5. 自律神経系への作用: 仙骨部や鼠径部への鍼刺激は、交感神経や副交感神経に影響を与え、血流改善や生殖機能の調整に寄与すると考えられています。

Q6: 不妊治療における男性の心理的側面について教えてください。

A6: 不妊治療における男性の心理的側面は、歴史的・社会的な背景もあり、しばしば見過ごされがちですが非常に重要です。

  1. 「男性は不妊の原因になりにくい」という誤った認識: 過去には日本では不妊原因の多くが女性にあるという暗黙の了解があり、男性不妊は軽視されてきた歴史があります。しかし、実際には不妊症の原因は男女ほぼ同数であると考えられています。
  2. 「男らしさ」や「生殖能力」へのプレッシャー: 男性にとって生殖能力は「男らしさ」と結びつけられがちで、不妊という診断は自信喪失につながることがあります。特に、性行為のタイミングを指示される「タイミング法」は「種馬」のように感じさせ、心理的なプレッシャーから勃起不全(ED)に陥る負のループに陥ることもあります。
  3. 情報収集の困難さ: ネット上の不確かな情報に惑わされたり、適切な知識が得られずに不安を抱えるケースもあります。正確な情報提供と心理的サポートが不可欠です。
  4. パートナーとの関係性: 不妊治療は夫婦関係にも影響を与え、互いを責め合ったり、すれ違いが生じたりすることもあります。夫婦間のコミュニケーションを密にし、協力して取り組む姿勢が重要です。 医療現場では、男性不妊の患者の心理的負担を軽減し、適切なサポートを提供することが求められています。

Q7: 卵子の受精と染色体の挙動について、最新の研究ではどのようなことが分かっていますか?

A7: 卵子と精子の受精、そしてその後の染色体の挙動については、近年詳細なメカニズムが解明されつつあります。

  1. 光への感受性: 卵子は、顕微鏡観察時に使用されるUVランプやレーザー光などの強い光に弱く、これらが受精や発生の停止を引き起こす可能性があります。
  2. 受精場所の制御: 卵子と精子の染色体は、物理的に引き離されるように制御されていることが分かっています。卵子の表面にはJunoとCD9という膜タンパク質が存在し、これらの分布によって精子との融合場所が規定されています。卵子染色体から遠い領域に結合した精子はその場で融合しますが、卵子染色体に近い領域に結合した精子は、いったん遠ざけられてから融合する様子が観察されています。この制御には、LAN-GTP活性とアクチンが関与していることが示唆されています。
  3. 融合後の染色体挙動: 受精後も、精子染色体は卵子染色体の近傍には動かず、さらに特定のエリアに限定されることが分かっています。これは細胞質流動や、卵子染色体近傍のアクチンキャップ、精子染色体近傍の受精丘といったアクチン構造体に依存していると考えられています。
  4. 顕微授精における注入場所: 顕微授精(ICSI)において、精子の頭部を卵子染色体の近傍に注入すると、染色体が融合してしまい、遺伝的異常を持つ受精胚(1PN: 一つの前核)が形成されるリスクが高まることが示されています。一方、細胞膜に近い場所に注入した場合は、正常な2PN(二つの前核)が形成されやすいことが分かっています。このことから、顕微授精では精子の注入場所を適切に把握することが重要であると結論付けられています。

Q8: 第三者提供による生殖補助医療(AIDなど)の現状と課題について教えてください。

A8: 第三者提供による生殖補助医療(AID: 非配偶者間人工授精、精子・卵子提供を用いた体外受精・顕微授精)は、国内では限られた施設で行われており、多くの課題を抱えています。

  1. 現状:
  • 主にAIDが行われており、精子提供が中心です。
  • 夫婦であること、精子回収が望めないなど特定の適応条件があります。
  • ドナーの匿名性が原則とされており、ドナーの個人情報は開示されません。
  • 告知の重要性や、子の出自を知る権利についてはカウンセリングで説明されます。
  • 生まれた子の親子関係については、近年法整備が進み、夫が同意して提供精子で懐胎した子は、夫が嫡出であることを否認できないと規定されました。
  • 一人の提供者の配偶子から生まれる子の数は、近親婚のリスクを避けるため、10人までとされています。
  1. 課題:
  • 出自を知る権利: ドナーの匿名性が原則であるため、生まれた子が自身のルーツを知る権利が保障されていないという国際的な課題があります。オーストラリアやUKなど海外では、一定の年齢に達した子がドナー情報を請求できる制度が導入されています。
  • ドナーの確保: ドナーの匿名性や倫理的な問題、社会的認識の不足などから、ドナーの数が減少し、提供サイクルが困難になるケースがあります。
  • 非公式なサイトの乱立: 国内には精子提供を謳う非公式なサイトが多数存在し、感染症検査や精液検査の不備、遺伝歴の不明瞭さ、提供者数の誇張など、多くの問題が指摘されています。これにより、提供される精子の安全性や倫理性、そして生まれる子の出自情報などが担保されず、健全ではない状況が広がっています。
  • 施設管理とバンク設立: 実施施設の管理体制、提供配偶子の入手と配送を行うバンクの設立・管理・運営は非常に複雑で、遺伝病のDNA検査の実施とその結果の取り扱いなど、難しい問題を抱えています。しかし、健全な提供体制を確立するためには、公的なドナーバンクの設立が喫緊の課題となっています。
  • 法的整備の遅れ: 近年親子関係に関する法整備は進んだものの、まだ全体的な法律の枠組みが不十分であり、代理懐胎など、今後の議論が必要な点が多く残されています。

STAFF

 【男性不妊担当】 

遠藤彰宏
AKIHIRO ENDO

はり師
きゅう師
あん摩・マッサージ・指圧師
大阪府出身
森ノ宮医療学園専門学校 鍼灸学科卒業
京都佛眼鍼灸理療学校 専科卒業
所属団体
JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)
鍼灸SL研究会
日本臨床鍼灸懇話会
日本鍼灸師会
全日本鍼灸学会
福岡県鍼灸師会
福岡市鍼灸師会

 

女性のための妊活治療
育卵・移植・妊娠維持

【女性不妊担当】 


遠藤真紀子
MAKIKO ENDO
はり師
きゅう師
不妊カウンセラー
福岡県出身
森ノ宮医療学園専門学校 鍼灸学科卒業
所属団体
不妊カウンセリング学会
JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)
鍼灸SL研究会
日本臨床鍼灸懇話会

 


竹永 百華
MOMOKA TAKENAGA
はり師
きゅう師
熊本県出身
福岡医療専門学校 鍼灸科卒業
YU
はり師
きゅう師
歯科衛生士

福岡県出身
福岡医療専門学校 鍼灸科卒業

 

男性生殖に関する基本

精巣 精子を作り出す工場
精巣上体 精子を成熟させる保管庫
(1-2週間 精巣上体での期間で精子は運動能を獲得する)
※一部精巣内から精巣上体へ移行する精子にも運動能があることが近年わかった
精管 精子を精巣上体から射精する発射台(尿道)まで運ぶ管
精嚢 精漿成分を作り出す
前立腺 精子の働きをアシストする助っ人
射精管 精子を尿道へ移送する
尿道 性交時に精子を発射する管


男性不妊のための鍼灸治療

造精機能を高め精子の数と運動率の向上へ


椎間板ヘルニアによる
「痛み」「痺れ」を改善

MRIで見つかる異常とのギャップ
局所炎症を改善

 


ぎっくり腰・急性腰痛

鍼灸こそがぎっくり腰に対する
最高の治療

 1-2 回の治療で改善


「膝痛」「変形性膝関節症」

変形の程度と膝の痛みは比例しない
滑膜の炎症を抑える

 


「四十肩」「五十肩」

それぞれの時期に合わせて
「治療」や「リハビリ」を指導

 

電気を流す美容はり

「全身の調整」×「美容はり」
田中はり灸療院のSpecial

 

逆子の鍼灸治療

 エコーを使って胎児の位置を確認

 

突発性難聴の鍼灸×レーザー照射

内耳循環に集中させ改善を狙う
聴力固定までに行いたい
耳鼻科との併用療法

顔面神経麻痺「Bell麻痺」「Hunt症候群」

顔への適切な指導とリハビリの徹底

 


耳鳴りに対する鍼灸治療

「内耳」×「自律神経」×「認知行動療法」