顔面神経麻痺の鍼灸治療 顔面神経麻痺の鍼灸治療で大切にしていること

顔面神経麻痺(ベル麻痺、ハント症候群)に対する鍼灸院で可能な最高レベルの鍼灸治療を!

はじめまして、田中はり灸療院の遠藤彰宏です。田中はり灸療院では、鍼灸治療をする前に現在発症された顔面神経麻痺が「なぜ発症したのか」「現在どういう状態にあるのか」を知っていただく必要があると考えています。

この知識については、古い東洋医学の文献では得ることができないため、現代医学の知識を顔面神経学会や、医学雑誌、文献などを中心として、「医療の視点」を大切にしています。

その上で、個々に異なる患者さんの現在地がどこにあるのか。

『鍼灸治療』、『スーパーライザーを照射』でどんな効果を期待しているのか。

丁寧に、わかりやすくお話しをさせていただきます。

『顔面神経麻痺で大切なことは、できる限り早い治療の開始』
顔面神経麻痺を理解していただき適切な時期に、必要な治療を行いたいと思います。

このページが、少しでも顔面神経麻痺に悩んでいる患者さんの一助になれば幸いです。


中枢性顔面神経麻痺と末梢性顔面神経麻痺の違い

急性顔面神経麻痺について

急性の顔面神経麻痺は大きく分けると画像の左「中枢性顔面神経麻痺」と右「末梢性顔面神経麻痺」に分類される。
中枢性は、「脳内に」。末梢性は、「脳から出た神経」に原因があるという大きな違いがある。

「中枢性顔面神経麻痺」(画像 左)
1.脳梗塞や脳出血といった脳血管障害が原因(全体の約4%)
2.顔面神経の麻痺以外に、手足の麻痺や、構語障害などがある
3.CTやMRIでの検査の後、脳血管障害に対する処置が必要
4.末梢性の麻痺に比べて著名な麻痺ではない(額の皺を寄せることができる)
5.ごく稀に、経過観察中に一度、回復傾向にあった麻痺が再び悪化してわかる(脳腫瘍による再圧迫等)

急性顔面神経麻痺の割合「末梢性顔面神経麻痺」の特徴(画像 右)
1.交通事故などの外傷によって発症
2.中耳炎、真珠腫など先に耳の症状を患い顔面神経麻痺がその後に起こる
3.急性顔面神経麻痺の大半は、「Bell麻痺」「Hunt症候群」が占める

 

 

顔面神経麻痺の診察について

 

Bell麻痺は、側頭骨骨折、中耳炎、ギランバレー症候群、耳下腺癌、顔面外傷、真珠腫等の病気がないことが診断に結びつく

「医療機関での顔面神経の診察の流れ」
「Bell麻痺」「Hunt症候群」が圧倒的に多い中で、まずは「中枢神経性の顔面神経麻痺がないか」(症状、随伴症状、MRI等)の確認が診察で行われ、何も原因となる特徴はない場合に末梢性顔面神経麻痺の「Bell麻痺」「Hunt症候群」という診断名がつきます。

Bell麻痺とHunt症候群

末梢性顔面神経麻痺のBell麻痺と、Hunt症候群の関係説明
「末梢性顔面神経麻痺」のそのほとんどは「Bell麻痺」「Hunt症候群」が占めています。

【疫学】
※どれぐらいの割合で顔面神経麻痺が発症しているか
15~30/10万人(年)〔Am Fam Physician.2007 Oct 1;76(7):997-1002〕
福岡市の人口150万人で考えると毎年225-450人が発症していると推察される。
当院へは福岡市内以外からも通院されるため、福岡県、九州地方と範囲を広げると、もっと多くの方が毎年発症していることがわかります。

Bell麻痺について

Bell麻痺のBellはイギリスの有名な解剖学者Sir Charles Bell(1774-1842)が由来。
現代のように薬が発達していない一昔前も完全回復する症例は多く報告されている。典型例は48時間以内に麻痺はピークをむかえるが、7日間は、増悪することもある。文献によっては、非典型例として、2週間増悪という報告もあるが非常に稀。未治療でも85%が3週間以内に改善傾向(71%完全回復,12%軽微,13%軽度,4%重度)残り15% 3-6ヶ月で改善傾向〔Acta Otolaryngol Suppl.2002;(549)4-30〕ということもあり、比較的予後が良い疾患として医学界では認識をされている。
Bell麻痺の特徴としては、一度回復した麻痺が経過中に悪化をすることはない。

※短期間(半年以内)で再発した場合には、他の疾患を改めて精査する必要がある。

Hunt症候群について

コロンビア大学神経内科教授James Ramsay Hunt(1872-1937)が1907年ウィルス性顔面神経麻痺の概念を提唱 VZV:水痘帯状疱疹ウイルスによる耳周辺の発疹を伴う顔面神経麻痺を「Hunt症候群」として現在にも名前が残っている。
Bell麻痺とHunt症候群の鑑別の仕方,耳症状のなし,耳の痛み,発赤,発疹,麻痺の程度が軽い,弱い

Bell麻痺とHunt症候群の鑑別

典型的な「Bell麻痺」であれば「麻痺の程度は比較的軽度、耳症状がない、額のしわ寄せが困難。」
典型的な「Hunt症候群」では、「麻痺の程度は比較的高度、耳症状あり、額のしわ寄せが困難。」
と一般の型でも判断がつくのが特徴的です。
臨床では、Bell麻痺の表情をしているが、重症度が高く、回復が長引く方がいます。
次の項のウィルス説は、まだまだ詳細に判明しているところまではいきませんが、これまでのBell麻痺の回復の良好なものと、回復がゆっくりなものの正体が違うことの説明としては、非常に納得ができます。

Bell麻痺とHunt症候群とウィルスとの関係(仮)

McCormickがBell麻痺の病因の一つとして単純ヘルペスウイルス(HSV-1:単純疱疹ウィルス)の関与を提唱。
その他にも水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化だが疱疹を欠くZSH:zoster sine herpete(Hunt症候群の亜型)が存在する。これにより末梢性顔面神経麻痺にウイルスが関与していない割合(NON HSV/VSV)が20~25%ぐらいではないかとする見解もある。

ウイルスの存在を証明するために抗体を測定するが、発症から1週間から10日間は抗体が検出されないため、従来の「Bell麻痺に」にはステロイドを処方する医師もいれば、ウイルス説を考慮し、抗ウイルス薬を投与する医師に分かれている。

多くの末梢性顔面神経麻痺の診断は確定診断(絶対にこの病気と診断できる)は難しく、推定診断(この病気が予想される)という中で治療が行われているという点が患者さんが考えている診断との大きな違いとして考えられる。

当院に来院される方の約7割は抗ウィルス薬(バルトレックス,バラシクロビル)を処方されている方がおり、年々抗ウィルス薬が処方されるケースは増えているようです。

 

 

 

末梢性顔面神経麻痺と解剖

顔面神経管の構造

人体最少の神経管 顔面神経管(側頭骨)


顔面神経管の走行
側頭骨内の顔面神経管は35mm程の長さで、2つの膝部を持つ複雑な走行をしている。
顔面神経管の太さについて示した解剖図、左から鼓索神経分岐部直径2.14mm、錐体隆起部1.62mm、アブミ骨部1.09mm、サジ状突起部1.39mm、内耳道底0.99mmさらに膝神経節部では直径はわずか1mm程という人体で最も細い神経管。

顔面神経管内の顔面神経と栄養血管の走行を示した解剖図、直径1mm前後の顔面神経管内に神経と血管が収まっている
その狭いの骨性空間で栄養血管と神経が走行している。

細い管内で虚血・浮腫・神経絞扼という悪循環

顔面神経管内で、神経炎が生じると、浮腫によって骨性空間では神経や栄養血管は圧迫性絞扼障害が生じて、さらに虚血に伴い浮腫は憎悪するという悪循環に陥るため、できる限り早期に病院で薬物療法(ステロイド、大量ステロイド、抗ウイルス薬)、重症度によっては入院による治療が必要。

病院での治療は、初期の炎症を抑えるという目的があるため、早期に治療を受ける必要があります。
年に数例は病院で治療を受けずに当院へ来院される方がいますので、きちんと治療の役割、目的が異なることをお伝えさせていただきます。
※妊娠中や、糖尿病の方は主治医の先生に相談いただき投薬治療を受ける必要がありますので、主治医の先生にご相談の上で耳鼻科や神経内科を受診してください

この後いよいよ。当院での鍼灸治療でどんなことを意識して治療を行っているのかご説明させていただきます。

顔面神経麻痺に対する当院での治療
鍼灸治療とスーパーライザー

田中はり灸療院で行っている顔面神経麻痺の治療

当院の顔面神経麻痺への考え方として、現代医学的な視点での鍼灸治療が中心となります。

1.鍼治療は、顔面部へ細い鍼を使用して、神経の回復を促す
2.スーパーライザーを使用し、星状神経節照射(SGB)を行い 交感神経の抑制を狙い、全身の血流を上げ、患部の治癒力を促進する
3.顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会(顔面神経学会主催)という医学会で推奨されているリハビリに準拠して病的共同運動の予防

※鍼治療の中で大切なお約束として、発症6か月未満の症例に対し電気治療は行っておりません。

その他の鍼灸治療
東洋医学や、中医学の考えで鍼灸治療を行うケースでは、病因(病気の原因)はAの疾患(顔面神経麻痺)、Bの疾患(腰痛)と疾患は異なっても、体質を含め身体の状態が同じであれば同じ治療を行うということが原則です。(同病異治、異病同治)
この考え方は、不定愁訴のように実態を掴みにくい症状には、得意な面を発揮しますが、顔面神経麻痺で「顔に治療をしない。」という治療方法になります。

顔面神経麻痺に対する鍼治療に関しては、当院では現代医学的な考え方に基づいて鍼治療、スーパーライザー、リハビリテーションを行うことを採用しております。

田中はり灸療院で使用している鍼について

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日本の鍼は非常に細い

鍼治療で使用する「はり(直径0.1mm)」は、鍼そのものが「注射針よりもずっと細い」のはもちろんですが、
毛髪(直径0.15mm)と比較してもさらに細いのが特徴的です。

※日本の鍼は中国の鍼と比較してさらに細いという特徴を持っています。

日本の鍼技術 管鍼法

150913-0009細い鍼を使用する際に、江戸時代から日本に登場したのが、管を使用して鍼を行う管鍼法という方法です。
この管は「鍼管(しんかん)」と呼ばれる筒状の道具で、治療を行う際の操作性だけではなく。
鍼による痛みを抑える効果をもっています。

美容鍼のようにお顔にたくさん鍼が刺さっている状態をみたことがある方がいると思いますが、顔面神経麻痺の際には、お顔に鍼を行っていきます。

お顔は、痛覚もたくさん多い中で、痛みがなく鍼灸を行うことが可能なことは「鍼が細いこと」「鍼管を使用する」という2点が非常に大切になってきます。

使用鍼のシングルユース(ディスポ鍼:使い捨て鍼)

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世界的にエイズやB型肝炎・C型肝炎・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が引き起こす院内感染が大きな問題となっています。

患者さんの血液や体液が注射針などの医療器具に付着し、注射針を誤って指などに刺した医師や看護師が発病するといった報告もあります。

このような危険を減らすために、当院の医療器具のディスポ-ザブル化(一回使用し廃鍼)を徹底、医療機関の注射と同じ基準で、当院では衛生管理を重要視しております。

 

よりやさしく、より再現性のある治療へ
SUPER LIZERの併療


当院ではSUPER LIZER(東京医研社製)による近赤外線照射(直線偏光近赤外線療法)を鍼灸治療と併療して治療を行っております。
SUPER LIZERは多くの大学病院や開業医の先生方が、様々な科で多くの疾患・症状治療に使われています。
SUPER LIZERの特徴として
①近赤外線は身体の中に一番深くまで届く光
②直線偏光処理した光は傷を早く治す力がある

この二つの特徴を持つSUPER LIZERと鍼灸治療と組み合わせることで、より効果が発揮されます。

近赤外線は身体の中に一番深くまで届く光(深達性)

体内の水に反応しない特殊な光を放出することで、深部の神経節に照射(SGR:星状神経節近傍照射)を行い、星状神経節ブロック(SGB)と同様の反応を引き出すことが可能です。

スーパーライザーの周波数帯解説の図

スーパーライザーによる治療の図

 

全身の血流促進

星状神経節照射後の手と顔の温度変化150913-0007

星状神経節近傍にスーパーライザーを照射し、交感神経の働き(過緊張状態)を抑えることで、次第に副交感神経の働きが優位になり、照射直後、照射15分後と皮膚温が上昇していることがわりまります。

顔面神経麻痺の評価と重症度

顔面神経麻痺の患者さんにとって最も大切なことはこの項目なのかもしれません。
「私の麻痺って治るのだろうか」「治るならいつ治るのか」が知りたいと思います。

顔面神経麻痺の評価法(柳原法)
顔面神経麻痺の評価方法としては、柳原法、House-Brackmann法、Sunnybrook法などがある。
日本国内では、柳原法40法が最も広く使われており、海外の論文を書く際に他の方法を併記するというのが一般的であり、患者さんに「どんな検査をしましたか?」とお尋ねすると、柳原法を受けている方に多く遭遇する。まず、ここでは簡単に柳原法について紹介します。

image48柳原法は、上記1~10の各項目4点で項目の合計が40点という評価方法で、初診時の評価および経過観察を行い35以上を治癒として評価します。
image49
麻痺の経過は、7日頃に完成する症例が存在するため、発症0-3日では柳原法22点以上である症例でも予後の悪い例が存在する。発症7日以降に22点以上であれば軽症と予測でき充分な回復を期待できる。

image50Seddonの分類
顔面神経麻痺の神経の損傷度合を分類したのがSeddon分類です。

「神経無動作」これは正座の後のしびれを想像してください。急激に圧迫が加わることで、しびれが発症し、その後圧迫が解除されるとしびれも回復する。これは麻痺でも同じことが言えます。急激に圧迫されることにより顔面神経麻痺が発症しているが、神経の損傷度合は小さくもしくは全くないため、圧迫が解除されるにしたがい麻痺も「完全回復」となる。

「軸索断裂」末梢性顔面神経麻痺の多くは、「神経無動作」と「軸索断裂」が混在している状態です。軸索断裂は回復はするが、完全回復とはいかない重症例ということが予想される。

「神経断裂」ビートたけしさんのように交通事故や外傷による顔面神経麻痺のため、「Bell麻痺」「Hunt症候群」では神経断裂は除外されます。

ENoG(電気生理学的検査)

image51 電気診断法には、神経興奮性検査(NET)、mazimal stiulation test(MST),electronneuro-graphy(ENoG)、磁気刺激誘発筋電図(TMS)、逆行性顔面神経誘発電位検査(AFNR)、瞬目反射(BR)などがある。電気診断法の検査目的として「神経無動作」「神経断裂」の割合を知ることが大きな目的となる。当院でも1割程度の方が検査を受けており、九州大学病院、福岡大学病院等で検査をされています。検査の目的も予後(治る可能性はどれぐらいか)だけではなく、手術が必要かどうかの判定にも使用されています。神経変性の逃れた割合が40%であれば予後は良く、10%を切ると予後は不良というのが一般的な検査診方と考えられている。
上記の患者は、ENoGが5%で当院を訪れた症例だが顔面神経麻痺の減圧術を受ける予定が別な病気がみつかり手術ができなかったため、当院で鍼治療をした経緯がある。6か月経過して、麻痺は完全回復し、若干の病的共同運動はあるものの、非常に喜ばれた症例も経験。(今後症例は加筆予定)

 

顔面神経麻痺の症例

当院を受診された方の中から、来院されらタイミングや顔面神経麻痺のタイプ別に分類を行い特に特徴的な症例をご紹介します。
(尚、この症例は顔面神経麻痺の症例の一部ですので、さらに詳しい内容は、今後加筆を行い整理をしていきつつ、来院時の説明ではより具体的に多くの麻痺症例の動画を見ながら回復の過程など説明をさせていただきます)

 

症例1(Bell麻痺タイプ軽症)

44歳男性 発症1週間前

1週間前に発症。起床時に動かないことに気がつき病院を受診。
1週間のステロイドの点滴治療、当院へ来院当日より飲み薬に変更。
image53
当院受診時 顔面神経スコア22点 その他の症状 耳鳴り(高音)

発症初日から現時点(発症1週間)で麻痺スコア22点を超えていることより軽症例と推察。
「治りは良いと思います。」とお伝えして治療開始。

経過:1週間に2回の治療で2週間で治癒。(発症3週間)

治療を終えてコメント:
上記の図のように、発症1週間で顔面神経麻痺スコア22点あり、治りが良いことが予想されました。発症後すみやかにステロイド治療(点滴)を受けており、鍼灸治療後も急速に回復。

麻痺の程度も軽く、早期に病院での治療、鍼治療の開始と理想的な治療のタイミングだった考えています。治療の経過から典型的なBell麻痺タイプの症例と分類。完全回復。

症例2(Bell麻痺タイプ中等度)

58歳女性 発症1週間前

発症6日前に右耳周辺に痛みを感じ、少しずつ痛みが悪化。
発症3日前に美容室へ行き、目の重たさを自覚し、その後少しずつ動きが悪くなり、飲み物が口からこぼれるようになったため近医内科を受診「ステロイド剤処方」される。
翌日、耳鼻科を受診「薬は昨日の内科の先生の処方のままいきます。Bell麻痺と考えて良いでしょう。」「頭痛も一緒にあるので、念のためにMRIを撮りましょう。」MRI検査の結果脳内に異常なし。
知人の紹介で当院を受診し、鍼灸治療開始。

image54当院受診時 顔面神経スコア12点 その他の症状 なし

顔面神経麻痺の程度として、中等度と推察。「顔面神経麻痺に対して治療を行いながら、しっかり経過を観察していきます。発症して治療も早いこともあり、治癒を充分期待できると思います。」とお伝えして治療を開始。

経過:1週間に2回の治療で鍼灸治療開始2か月で治癒(発症より2か月+1週間)

治療を終えてコメント:
MRIで脳内に異常がなく、発症時より「ステロイド剤の内服」を開始しており、鍼灸治療後も急速に回復。当院へ受診のタイプで最も多いのがこの症例と同じレベルの麻痺を経験します。
面神経麻痺治癒後も、肩凝りや頭痛のケアで継続して定期的なケアを行い、その後も病的共同運動もなく完全回復。

症例3(Bell麻痺もしくはHAV-1、ZSHと推察)

70歳女性 発症2か月前 (以前に反対側の麻痺を経験)

近医耳鼻科にて、ステロイド+抗ウィルス薬を処方。
耳鼻科より紹介で、脳神経外科でのMRI検査も異常なし。
発症から1か月までは病院での点滴治療を継続的に受けつつ、近くの整骨院で電気治療を週に2回受ける。電気治療を受けていると、以前顔面神経麻痺(16年前)を発症した側で違和感を生じてきたため、鍼灸治療のみを希望し、当院を受診。

当院受診時 麻痺スコア26点 その他の症状 なし

「顔面神経麻痺の初期の治療としては、薬の処方はしっかり受けて来られました。電気の刺激については諸説ありますが、当院でも電気治療、鍼通電ともに行っておりません。しっかり回復にむけて鍼治療を行っていく」旨を説明し治療を開始。

経過:週2回5か月間、週1回2か月、月2回を5か月間(合計1か月)

治療を終えてのコメント:
顔面神経麻痺を以前経験されていることから、他の患者さんと異なる印象をもった点が一つ「前回もゆっくり治りましたので」と、とても落ち着いて治療に望まれていたことがとても印象に残っています。治療を継続する中で、通院当初は、マスクとサングラスが定番のスタイルでしたが、麻痺の回復につれサングラス、マスクが取れていきました。また、発症時には、「同居している孫が食事の時に、私の顔をみてくれない」と話されていましたが、回復にしたがいお孫さんとの会話も増え普段の日常に戻っていかれました。
1年という期間が要した理由としては、発症時の麻痺スコアが不明も「ステロイド+抗ウイルス薬の処方」からみても麻痺の程度はある程度重症であった可能性が示唆されます。ZSHという耳に疱疹はないものの帯状疱疹ウイルスにより発症している場合には、Bell麻痺より重症例化する傾向にあり、今症例も結果的にはZSHの可能性も考えられます。また、年齢的な要因も回復に時間がかかった理由の一つと考えられます。病的共同運動もなく、完全回復されました。

症例4(Bell麻痺もしくはHAV-1、ZSHと推察)

41歳女性 発症6か月前
「頚に痛みがあり、発熱もあったため風邪かインフルエンザだと思っていた。」
軽い麻痺はあったが、発症時が土曜日だったこともあり、月曜日に近医耳鼻科を受診。
ステロイド剤を2週間、ビタミン剤とともに服用。2週間以降はビタミン剤のみ。

発症2か月頃
ビタミン剤のみの治療だけでは不安もあり、大きな病院を受診。
これまでの経過、治療などを聞かれたため、質問に答えると
「抗ウイルス薬は使わなかったの?」と担当した医師にいわれる。
「もう処方できる時期ではない。」と告げられショックを受ける。

発症5か月頃より
目を閉じた際に、右の鼻唇溝周辺で筋肉の収縮が出始める(病的共同運動出現)
また、眼の下で痙攣が出現。

発症6か月で当院を受診
当院受診時 麻痺スコア 30点 その他の症状 病的共同運動

半年経過していることから、「麻痺の治療回復はやってみなければ、わからないが回復してくる発症1年以内であれば回復する症例もある」ことを説明し、治療を開始。尚病的共同運動については難しい旨を説明。

経過:約5日に1度治療

治療を終えてコメント:
病的共同運動は鍼灸治療中に1度も消えることはなかった。しかし、麻痺の回復とともに、目立ちにくくなった印象がある。病的共同運動の「ある」「なし」でいえば「ある」。程度は軽いため、おそらく迷入再生の数としては、それほど多くはないのではないか。それ以外の麻痺が回復するにつれて表面を覆い隠すようにマスクされ見た目の印象を目立ちにくくしていたのではないかと考える。

この患者さんを通じて、一番印象的なことはやはり医療機関の対応を考えるきっかけとなりました。
患者さんは医師を信頼し、任させるより他なく、経過が思わしくないことからネットで新しい情報を検索した結果「もし、あのとき抗ウイルス薬を処方されていたら…」という心情を抱く。
次に訪れた病院では「抗ウイルス薬の処方はなかったの?」それはあまりに酷ではないか。

臨床をしていると、初診時に確定診断できる症例が非常に少ないことを実感します。
顔面神経麻痺はその典型例です。
顔面神経麻痺は、予後が良好な症例も多いため「ステロイド治療」を主体とする医師。
いや、予後不良な症例も少なからず存在するため「抗ウイルス薬」を処方しておこうと考える医師。
どちらを第一選択とするかは、未だに議論がつきないし、医師の経験測に頼らざるを得ないのが現状です。
結果論ではなんとでもいえる中で、もう少し患者さんの心情に寄り添う言葉かけがなされても良いのではないかと感じました。
鍼灸院へ来院される方には、このような患者さんを多く経験します。
患者さんがあらかじめ多くの情報を集め、後悔のない選択をする必要があるのではないでしょうか。

症例5(Bell麻痺もしくはHAV-1、ZSHの中等度と推察)

40歳女性 発症1か月半前(以前、同側の顔面神経麻痺を経験)

麻痺の発症と右耳の痛みで発症。(右耳の痛みは手を置かないといけない程の痛み)
①近医の耳鼻科を受診「Bell麻痺でしょう。」ステロイドを処方される
以前に同側の顔面神経麻痺を経験しており、その顔面神経麻痺時の経験があったことから、「今回の顔面神経麻痺より重症なのに、Bell麻痺ってことはない。」「これはまずい。」と自己判断。その日のうちに別な耳鼻科を受診。

②次の耳鼻科へ「耳の痛みもあったことから、Hunt症候群も疑いがあるため抗ウイルス薬を処方。」
1週間通院。その間発疹はない。(抗ウイルス薬を処方された場合には、発疹が薬により抑制され出ないとする文献もある)

③大きな病院へ転院(1か月間)
抗ウイルス薬処方、ブロック注射などを受ける。

④退院後にペインクリニックで、星状神経節ブロック注射を受けながら当院で鍼治療

当院受診時 麻痺スコア14点 その他の症状 なし

経過:北九州より週2回通院 その間毎日ペインクリニックで星状神経節ブロック注射を受ける

 image60 3か月間の治療で麻痺スコア26点まで回復。そのタイミングで職場復帰を決断され治療距離もあることから当院への治療は継続が難しくなり治療中止。

治療を終えてコメント:
症例4とは異なり、患者さんの経験が活かされたと言える症例だと言える。同じ症状を診てもやはり医師による対応、診断も異なるため薬の選択が変わる。どちらが正解とはやはり言えないが、結果的には自分が決断して治療を受けることができているため、経過に対する不満はなく。「やるべきことはやった。」という印象を受けた。

その他の症例 ライム病疑い、Hunt症候群、ENoG5%の症例などの特徴的な症例なども今後追記予定です。

 

 

 

その他,当院の専門分野

突発性難聴と鍼灸治療

不妊治療と鍼灸治療について

逆子と鍼灸治療(エコー完備)

 

椎間板ヘルニアと鍼灸治療

四十肩・五十肩の鍼灸治療

急性腰痛の鍼灸治療