睡眠障害と鍼灸〜眠れない悩みに東洋医学ができること〜

 

「布団に入っても眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝のスッキリ感がない」

こうした“眠りの不調”は、現代では珍しいものではありません。

生活習慣の乱れ、スマホ、ストレス…。

しかし実は、身体の内側のバランスの乱れが原因になっていることもよくあります。

今回は、鍼灸が睡眠にどう働きかけるのかを

東洋医学 × 現代医学 の両面から専門的に、でもわかりやすく解説していきます。

 

1|睡眠障害はどこで起きている?東洋医学的な視点

東洋医学では、睡眠は「心(しん)」が落ち着いていることで成り立つと考えます。

“眠れない”という状態の裏には、いくつかのパターンがあります。

① 心脾両虚(しんぴりょうきょ) ― 体も心もエネルギー不足タイプ

•考えすぎ・疲れすぎが続いた結果、気や血が不足

•ぼんやりする・疲れやすい・眠りが浅い

→ 鍼灸では「気血(きけつ)を補う」ことで眠りが深まりやすくなります。

② 心腎不交(しんじんふこう) ― ほてり・寝つきの悪さタイプ

•年齢、働きすぎ、ストレスなどで“腎の潤い”が不足

•寝つきが悪い、夜に頭が冴える、ほてり

→ 「腎の潤いを補い、上に昇る熱をさげる」施術を行います。

③ 肝鬱化火(かんうつかか) ― イライラ・自律神経乱れタイプ

•ストレスが長く続き、肝(感情コントロールの役割)の働きが乱れる

•イライラ、不安、胸の張り、寝つきの悪さ

→ 「気の巡りを整え、過剰な高ぶりを鎮める」施術が中心。

④ 痰熱内擾(たんねつないじょう) ― 胃腸疲れからくる睡眠障害

•食べ過ぎ、脂っこい物、甘い物が多い

•胃腸が疲れ、余分な熱や痰が身体の中にこもる

→ 「胃腸を整え、内側の熱をさげる」アプローチ。

2|鍼灸が睡眠を改善する“科学的”な理由

鍼灸は気の巡りだけではなく、現代医学的にも睡眠に関わる体の仕組みに作用します。

① 自律神経が整う(迷走神経の活性化)

鍼刺激により、リラックスを司る 副交感神経の働きが高まり

心拍変動(HRV)の改善がみられます。

▶ つまり

•緊張がほぐれる

•寝る前の“頭が冴える感じ”が減る

という変化が生まれやすくなります。

② ストレスホルモン(コルチゾール)が下がりやすい

ストレスが続くと、睡眠を妨げるコルチゾールが過剰になります。

鍼灸は、視床下部―下垂体―副腎(HPA軸)の働きを調整し、

コルチゾールの過剰分泌を抑える方向に働くことが報告されています。

③ セロトニン → メラトニンの流れをサポート

百会や神門などのツボ刺激は、脳幹のセロトニン量と関連があり、

結果として睡眠ホルモンである メラトニンの調整にもつながると言われています。

④ 頭・首・肩の緊張がゆるみ脳血流が改善

PC・スマホ疲れが多い現代人では、首肩の凝りが睡眠の質を下げます。

鍼灸は深部の筋肉を緩め、脳への血流改善が見られるという報告もあります。

3|睡眠に用いられる代表的なツボ

● 百会(ひゃくえ)

頭のてっぺんにある万能ツボ。不安・ストレス・慢性不眠に。

● 神門(しんもん)

手首の小指側。緊張や精神疲労を和らげる効果が期待できます。

● 太衝(たいしょう)

足の甲にあり、ストレスやイライラに関連する「肝」を整えるツボ。

● 安眠(あんみん)

耳の後ろ。名前の通り、眠りの質と深さに関係。

4|鍼灸が向いている睡眠トラブルは?

•寝つきが悪い(入眠障害)

•夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)

•夢が多く眠りが浅い

•ストレスで夜になると頭が冴える

•薬を減らしたい・なるべく自然に改善したい

副作用が少なく、体質から整えていけるのが鍼灸のメリットです。

5|治療のペースと改善の目安

急性の不眠(ストレスや出来事が原因)

→ 1〜3回で変化が出ることも

慢性的な不眠(3ヶ月以上)

→ 4〜10回で睡眠リズムが改善し始める

更年期・自律神経の乱れが背景にある場合

→ 数ヶ月の継続で体質改善が期待できる

もちろん個人差はあります。

6|まとめ:鍼灸は“眠れる身体づくり”を助ける方法

睡眠障害は、単に「眠れない」だけでなく、

自律神経・ホルモン・ストレス・内臓の働きなど、

身体のさまざまなバランスが絡み合って起きます。

鍼灸は、この複雑なバランスを整えることで

自然な眠りを取り戻すサポートができる療法です。

薬に頼りすぎたくない方、体質改善を望む方には 特に向いています。