冷えと鍼灸

〜身体の芯から温める東洋医学の知恵〜

朝晩が冷え込み、手足の冷たさを感じる季節になると、「冷え性がつらい」「体が温まらない」と感じる方も多いのではないでしょうか。

冷えは単に「寒い」と感じるだけでなく、肩こり・頭痛・生理痛・不眠・便秘など、さまざまな不調を引き起こす原因になることがあります。

東洋医学では、冷えは「気・血・水（き・けつ・すい）」の流れが滞った状態と考えられています。

今回は、そんな冷えと鍼灸（しんきゅう）の関係について詳しくご紹介します。

冷えの原因とは？

冷えの原因は人によってさまざまですが、主に以下のようなものが考えられます。

1.血流の滞り（瘀血：おけつ）

　運動不足やストレス、長時間の同じ姿勢などで血の巡りが悪くなると、手足の末端まで熱が届きにくくなります。

2.エネルギー不足（気虚：ききょ）

　東洋医学では「気」は身体を温める力でもあります。疲れやすい、食が細いなどの人は、気が不足して冷えやすい傾向があります。

3.水分代謝の乱れ（痰湿：たんしつ）

　冷たい飲み物や甘いものの摂りすぎで体内に余分な水分がたまると、内側から冷やしてしまいます。

4.ホルモンバランスや自律神経の乱れ

　特に女性に多いのがこのタイプ。ストレスや月経周期、更年期などで自律神経が乱れると、体温調節がうまくいかずに冷えを感じやすくなります。

5.寒冷ストレス負荷による血管反応が低い

冷えによる寒冷刺激を受けた場合、筋肉、血管が収縮し血流量の減少から皮膚温の低下が認められます。手足の冷えを訴える人では、寒冷刺激を受けた際の皮膚温の回復が遅延している場合があります。ラットの実験ではオスよりもメスの方が血管拡張の反応が遅いという報告もあります。

鍼灸でできる冷え対策

鍼灸は、ツボ（経穴）を刺激して気血の流れを整えることで、体の芯から温める効果が期待できます。

血流を促進し、自律神経を整える作用もあるため、冷えの根本改善に有効です。

■ 鍼（はり）の効果

鍼を刺すことで、筋肉の緊張がほぐれ、血流が改善します。

また、自律神経を調整し、末梢の血管を拡張することで手足の冷えを和らげます。

■ 灸（きゅう）の効果

お灸は、ツボに温熱刺激を与えて体を直接温める療法です。

よく使われるツボとしては、

•三陰交（さんいんこう）：足首の内側。女性の冷えや月経不調に効果的

•足三里（あしさんり）：膝の下。全身のエネルギーを高める

•関元（かんげん）：おへそから下のツボ。下半身の冷えや疲れに

•八髎穴（はちりょうけつ）：仙骨のツボ。腰仙部の気血の流れを改善

 

家庭でできるせんねん灸などを活用して、日々のケアにも取り入れやすいです。

仙骨部は貼るホッカイロで温めてもOK

 

鍼灸の魅力 〜冷えだけで終わらない全身調整〜

冷えを改善することで、睡眠の質が上がったり、肩こりや生理痛が軽減したりすることも多くあります。

鍼灸の魅力は「冷えを取る」だけでなく、「身体全体のバランスを整える」点にあります。

冷えが改善すると、自然と気分も前向きになり、体も軽くなります。

「冷えは万病のもと」と言われるように、温かい身体は健康の第一歩です。

まとめ

冷えは、放っておくとさまざまな不調の原因となるサインです。

体質に合わせた鍼灸治療で、身体の内側から温めていきましょう。

日常生活でも、

•冷たい飲み物を控える

•適度に体を動かす

•足首・お腹を冷やさない

など、できることから始めてみてください。

「冷えにくい身体」を作ることが、健やかな毎日への近道です。

【こんな方におすすめ】

•手足が常に冷たい

•生理痛やPMSがつらい

•眠りが浅い・疲れやすい

•肩こり・腰痛が慢性化している

そんな方は、一度鍼灸の温かさを体験してみてはいかがでしょうか。