顔面神経麻痺における鍼灸師の役割とは
顔面神経麻痺における鍼灸師の役割とは
顔面神経麻痺における鍼灸師の役割は、麻痺の段階や程度に応じて異なり、多岐にわたります。
顔面神経ガイドラインでも鍼灸が取り上げられたように、鍼灸治療の役割、鍼灸師の役割がより強く求められるようになってきました。
一つは、病院、医師、リハビリの先生方があまりにも多忙なために患者さんお一人お一人に適切な治療をすることで精一杯で、患者さんの重症度や、病気に対する理解度に合わせて
丁寧に指導する時間は取れていません。そのため当院では鍼灸治療はもちろんですが、日常で顔面神経麻痺を回復させながら伴走するかという決して治療だけを行なっている関係性ではありません。
当院で考えている鍼灸師の役割として
- 鍼灸師は、リハビリの方法や日常生活の指導を行い、患者さんが薬物療法や鍼灸治療だけでなく、セルフケアを適切に行えるように支援します。
- 鍼灸治療は、顔面部の血行を促進し、ストレスや違和感を軽減することで、日々の生活をサポートします。
- 重度の麻痺の患者さんに対し、鍼治療とセルフケア指導を併用することで、顔面の運動機能の回復だけでなく、顔面の感覚や社会活動といった QOL (生活の質) の向上が見込めます。
- 鍼治療は、顔面神経麻痺後遺症として残るこわばり感や突っ張り感を軽減し、患者さん自身がセルフケアを行いやすい状態にすることが効果として認められています。
- 鍼灸治療によって、顔面の感覚、特に顔のこわばり、つっぱり感や痛み、顔の疲れといった症状の改善が期待できます。
発症初期 発症早期においては、顔面神経麻痺の診断と治療は耳鼻科が中心となり、鍼灸師は医療機関と連携を取りながら、鍼灸治療が有効かどうかを見極める必要があります。
患者さんが受けている治療や、リハビリをお伺いした上で必要な医療機関をご紹介しております。
慢性期・後遺症期 慢性期においては、鍼灸師はセルフケア指導を通じて、患者さんが自身の状態に合わせて適切なケアを行えるようにサポートします。
丁寧に治すこと。麻痺をゆっくり回復させて後遺症を可能な限り少なく
顔面神経麻痺の患者さんにとっては、「早く治したいから鍼灸を受けたい」というお声をいただきますが、これは最新のデータ、リハビリの考え方とは異なる考え方です。
顔面神経麻痺にも1.0 2.0 3.0 のように時代と共にアップデートが求められます。
そのため鍼灸院によっては「鍼に電気を通電する」というところ
顔が動かないのは、東洋医学では「肝」の病態なので、「肝」に関わる経絡・経穴を治療を行い顔には施術をしない
リハビリは大きな運動するなど情報が更新されていない鍼灸院のお話も耳にします。
顔面神経麻痺のリハビリで大切なことは、麻痺の段階と重症度によって異なってきますが共通していることは
ですので、可能な限り早くよりも丁寧にが優先されます。
初期(急性期)のリハビリ
- 発症初期から10日間ほどは、角膜の保護とストレッチの指導、粗大運動の禁止が重要です。
- 発症初期には、顔の筋肉を無理に動かすとかえって逆効果になる場合があります。
- 顔面神経を刺激し、表情筋の収縮反応を観察することが、予後を予測する上で役立つことがあります。
- 重症例では、初期から強い筋収縮を避けるべきです。
- 発症から2週間以内であれば、神経を目標とした通電は禁忌とされています。
慢性期・後遺症期のリハビリ
- 慢性期には、拘縮の軽減が重要になります。
- 顔面神経麻痺リハビリテーション指導士による指導を受けることが推奨されます。
- セルフケアを円滑に行えるように、個々の表情筋の構築を軽減し、突っ張り感や痛みを軽くすることが大切です。
- 顔面感覚の改善は、QOL(生活の質)の向上に大きく寄与します。
- 口角を健側の方に引っ張ることで、口角の偏りを予防できます。
- 表情筋の過度な運動や強い電気刺激は、病的共同運動を悪化させる可能性があるため避けるべきです。
- ゆっくりと、イメージ的に顔を動かすことが大切です。
- 精神的なケアも重要であり、患者の焦る気持ちを抑えながら、丁寧にリハビリを進める必要があります。
その他
- 日本顔面神経学会が認定する顔面神経麻痺リハビリテーション指導士の資格は、鍼灸師も対象としており、専門性を高める上で有用です。
当院では顔面神経麻痺学会主催の顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会を修了した鍼灸師が2名遠藤彰宏、竹永百華が治療させていただきます。 - 鍼灸師は、患者さんの不安を取り除きながら、適切な情報提供を行い、患者さんが安心して治療を受けられるように努めることが重要です。
顔面神経麻痺に対する鍼治療に関する情報はまだ不明な点が多く、今後の研究によってエビデンスの確立が期待されています。
専門家に相談する
顔面神経麻痺は病院に行ったらすぐに治るという類の病気ではありません。
回復までに早ければ約3ヶ月〜長い場合は数年の時間を必要とします。
そのため、不安なことがあったらすぐに相談できる存在がいることは大切です。
不安を抱えている状態はストレスがかかるため、回復にとって良いことではないと断言できます。
安心できる環境や理解してくれる存在が治療の一部になるのです。
ただし鍼灸であればどこでも良いのではなく、顔面神経麻痺について詳しく経験豊富なところに相談するのが良いでしょう。